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爽快に痛快に、成瀬が道を切り開く。ゼゼカラどこまでも。/『成瀬は信じた道をいく』感想

以前読んだ『成瀬は天下を取りにいく』が、この記事を書いている2024/2/3時点では本屋大賞ノミネート作にもなっている。本屋大賞以前にもなんやかんやで受賞していて10冠らしい。すげえや。

祝10冠! 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』が、坪田譲治文学賞を受賞しました。 | 株式会社新潮社のプレスリリース

このように”成天”がまだまだ盛り上がっている中、続編の『成瀬は信じた道をいく』が発売された。成瀬の勢いが止まらない。前作の話は過去に書いたので置いておく。滋賀においでよ。ミシガンに乗ろう。

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成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ

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成瀬は信じた道をいく 「成瀬」シリーズ

成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応え、ますますパワーアップの全5篇!

Amazonあらすじより

今回もめっちゃおもしろかった、成瀬のズンズン進んでいく姿には元気が出るし、そして極めつけの最終話!今まで「いつまでこんなことやってんだ…」と思っていたイベントをちょっと許せてしまった。こんな形であのイベントが取り上げられるとはよ…参ったぜ…。

という感想である。ネタバレを配慮するとこうなってしまう。前作から引き続き、成瀬は成瀬であり、信じた道をずんずん進んでいく。その成瀬に巻き込まれている人たちも良い味でている。クレーマーさんはともかく、みらいちゃん、城山、篠原かれんちゃん。成瀬のまっすぐさをバカにするでもなく、その行動力と一貫性にぐいぐい引き込まれている様がいい。ほどよい距離感の輪が広がっていく。

びわ湖大津観光大使就任、フレンドマート大津打出浜店(大津テラス店かな)といった滋賀滋賀した話が出てくる一方、進学先の京都や、観光大使としての職務で訪れる他地方。ずんずんと成瀬の活動の幅が広がっていく痛快な物語。ぐいぐいと読み進められるので、ぜひ前作とセットで読んてみてほしい。前作の一編はすべて試し読みできるようになっている。すべて試し読みとはなんなのか。

www.shinchosha.co.jp

ずんどこ話が進み、成瀬はズバズバと真面目にまっすぐに邁進していく。その姿に元気がでる。周囲に良い影響が波及していく。これからもずっと見守っていたい。そんな小説だ。続きが出るのが楽しみだ。

 

以下は少しネタバレに触れる。

 

成瀬は信じた道をいく 「成瀬」シリーズ

 

 

最後のけん玉の下りは膝を叩いた。島崎と成瀬、それぞれお忍びですれ違っただけかと思いきや、あらゆる寄り道をした後になんと紅白に出場している。けん玉記録挑戦者の一人として紛れ込んでいる。紅白のけん玉企画に対してあまり良い思いを持っていなかったが、成瀬がびわ観光大使の服装でけん玉に挑戦していたら応援してしまうだろう。まさかこんな形で「けん玉企画もええやん」という感想を抱くとは思わなかった。マジかよ成瀬。金沢遠征の時のけん玉パフォーマンスが布石だったとは。

そして先程も話したかれんちゃんもいいキャラだ。つっけんどんに成瀬の真面目さを小馬鹿にするタイプかなと思いきや、真っ直ぐな成瀬を認めてくれているいい子だった。

明らかに苦笑いとわかる表情を浮かべる観光協会の二人を見たら、ちょっと腹が立ってきた。成瀬はただ観光大使としての職務をまっとうしようとしているだけなのに。

成瀬は信じた道をいく/宮島未奈 122ページ

わたしは思わず「すげえな」と呟いていた。

成瀬は信じた道をいく/宮島未奈 126ページ

この辺で一気に好きになった。島崎とも仲良く慣れそうだし、今作に出てきた方々それぞれの形で成瀬と関係性を築いていって頂きたい。呉間妻はまぁ…うん。

広島の友達が京都の大学を受験していたくだりがあったので、成天で出てきた彼との再会もあるのだろうか。あるけど描かれないかもしれない。しれっと出てくるかもしれない。それも成瀬シリーズっぽい。続編が出るのが待ち遠しい。まだまだ成瀬を追いかけたい。