DegoReco

でごのつづるレコメンド。レコード。おすすめと、記録。

この喜びをみんなと共有できる。それがいい。/DAYS 368th day~370th day感想

久しぶりにDAYSの感想記事を書きます。前回書いたのは桜校戦の前半戦でした。今回の記事は試合のクライマックスにあたります。思えばめちゃくちゃ長い試合になってますね。ただその分、多くの登場人物にドラマがあり、掘り下げがあり、魅力の再発見にも繋がっており、DAYSという作品の大きなヤマであることは間違いありません。

※本記事はDAYS単行本41巻(2020/12月発売)の次の話からのネタバレとなります。単行本派の方はご注意ください。

 

DAYS(41) (週刊少年マガジンコミックス)

スポンサーリンク

 

 

(他の漫画にも当てはまるっちゃ当てはまるんだけど)スポーツ漫画の良いところは、「今まで戦った相手」たちが何かしら語れる要素がある…ということだと思います。地方予選であたったところ、1回戦であたったところ、昨年戦ったところ…などなど。

それぞれの相手が知る「その時の主人公チーム」は今に至って成長したり、変化したりしている。その変化に対する驚きを、成長に対しての称賛を、当時確かに名勝負を繰り広げた相手たちが今語る姿……を読者が見ることができる。

 

スラムダンクでは、全国の舞台で花道がジャンプシュートを決めて驚いたのが味方や地方予選で戦った海南高校のメンバーだったように。

ハイキュー!!では日向や影山、ツッキーの変化や成長に対し、及川さんはじめ他校のメンバーが驚いていた。対戦当時の印象や経験から語れることもあり、他の試合の解説っぽい役割も果たしていた。(ブロック巧者鴎台との戦いで、日向の速いドンジャンプに伊達工メンバーがざわついてたのがイイ)

これらはあくまで一例で、スポーツ漫画に限った話ではないが『あの時はアレしかなかったアイツがコレも身につけたのか』『苦手だったソレを克服したのか!』など…、ハイキューの記事でも同様の表現をしたけれど、対戦当時に抱いた印象を『点』として、時系列に伴い『線』になり、それが束になり作品の柱となっていく様に、我々読者は胸を熱くするし、それらを作中の人物たちにも語らせることで「そうだよなぁ!すごいよなぁ!」となぜか誇らしげにも思う。

DAYSの桜校編はそれらの集大成ココに極まれり!みたいに詰まっています。

313話、314話のつくし公式戦初ゴールで周りのみんながこれでもかと喜んでいたのは前の記事でも書いたとおり、それまでの「つくしのがんばり」を誰もが見ていたし、対戦相手も下手くそながらも見せるそのひたむきさが印象に残っていたからこそ、それが実ったゴールに称賛を惜しまなかった。

368~370話で見せるつくしの二回目のゴールは、このDAYSという作品が目指していた形なんだろうなと思うゴールでした。途中参加の風間は、道中つくしのゴールを見て気持ちにスイッチが入ります。同時に知ったのが「つくしが部活を辞める意思を固めている」こと。

368,369話のつなぎがまたいいんですよね。

368th day 「確かなもの」

368th dayではつくし→風間へとパスを繋ぎながら、風間からつくしへの心情がたっぷりと語られます。

誰が想像できたろう あのつくしがここまでの選手になることを
思えばおれはずっと 過去を振り切るためにサッカーをやってきた
(中略)
でもオマエは迷いながらも いつだって明日を手に入れるために努力してきた
俺に欲しい物ができたように お前にも譲れないものができた
DAYS 368th day「確かなもの」より

つくし自身も体に蓄積した疲労が痛みにかわり、楽しい日々を過ごしながらも「大事にしたい日々」についても色濃く見えるようになり、そこに整理をつけたいと思った。
そんなつくしの思いを汲みながら、ひたむきに一つひとつ積み重ねてきたつくしの姿から、チームに「優しさ」を持ち込んだつくしの姿から、風間も大きく成長してきました。自分にとって大事なものを見つけた彼らが歩む道は異なるのかも知れない。ただ、この出会いへの感謝と、今後も変わらず親友であることは変わらない…。

何かしら捨ててきた、執着を持たず飄々としてきた風間が見つけた確固たる思いがこの話ではたっぷりと描かれました。そして梁山戦とは正反対の展開に。風間が引きつけ、フリーのつくしへとパス…!!

369th days「Days」

このあたり、梁山戦最後のパスシーンを読み返すとまた泣けてきますね。その時のつくしのセリフがまたいいのよ。

そうだ あの日からずっと 僕の隣には風間くんがいた
DAYS 241st day「風と土」より

逆もしかりです。風間の隣にはつくしがいる。368話でのパスを受け、369話はこう始まります。

風間くんなら絶対見ていてくれると思った
僕がどこにいても どう動いても必ず
DAYS 369th days「Days」より

 この話のつくしのモノローグ最高すぎる。つくしのモノローグしか聞こえないんです。会場の様子、興奮する仲間たちの絵はあるけど、効果音すらない。ひたすらつくしが心情を吐露している。

先程の風間と逆なんですよね。つくしは不器用で、いろんなことを手に入れようとして、何もかも大事で、だからこそ迷ってしまった。困ってしまった。無理をしてしまった。

ガムシャラにやり過ぎていた自覚はあった
追い詰められていた感覚もあった
(中略)
ちゃんとした人間になりたい 強く 優しく
ふつうのことくらいふつうにできるように
だから整理しなくちゃと思うんだ
諦めるものは諦める 捨てるものは捨てる
そのために少しだけ考える時間が欲しい
DAYS 369th days「Days」より

中途半端に向き合いたくない、本気で向き合いたい。そういったものにいくつも気がついた時、がむしゃらにならざるを得なかった。結果零していくものも多く、つくしには辛かったのでしょう。しっかりと向き合うために、一度距離を置く。不器用だけど愚直なつくしらしい決意を語ってくれます。

 

そんな思いを語りながら、練習して練習して、密かに自信を持っているトラップで受け、水樹との特訓で磨いたシュートを放つ。1点目のおこぼれヘッドとは違う、自分で受けたパスをきちんとシュートして決めたゴール。

予選ではオフサイドで幻と化した経験から、まず審判を確認するのもつくしらしい。いの一番に駆けつけてくれる風間とのシーンは喜びが溢れていましたね。そして、そして…

この話の数話前、猪原が何度も何度もゴールを守りつつ、感情を表に出さない!!というのを散々見せつけておいて、つくしのゴールに一番遠くから、仲間を押しのけ押しのけ駆けつけて最高の笑顔をみせてくれる猪原先輩!!!!(ここで号泣)

 猪原先輩が感情をむき出しにして喜ぶ!!というのがどういうことか。ここで一番驚いて、嬉しくなった読者は多いんじゃないかな。

(↓漢の中の漢、猪原大権現)

DAYS(18) (週刊少年マガジンコミックス)

スポンサーリンク

 

370th day「最高の日」 

つくしの初ゴールの次の回でまるっと1話歓喜に使ってて最高だったんですけど、今回もばっちりなんですよね。最高の余韻回。

この話はDAYSを読んできた読者にとってのご褒美みたいな最高ポイントが3つあります。

一つは出会ってきた人たちの賛辞と喜び。「そうそう、そうだよな!めっちゃ嬉しいよな!!」と、読者も「俺達も見てきたぜ!!」と言いたくなっちゃう。つくし初ゴール時も同じような感じだったんだけど、風間→つくしのパスから決めた ということがまた一つ大きな意味をもたせていますよね。フットサル仲間のみなさんは本当に歴史の証人だよ。

もう一つは生方の涙。いろいろと感情を見せるシーンは多々ありましたが、自分の感情を直接この二人にバチコーン!!と伝えるのはありませんでした。ちょっと冷めていたり、もちろん本気で取り組んでいながら、感情はあまり表に出さないようでいた一面をよく見ていただけに、語彙も何もかなぐり捨てた「お前ら最高だよ!!」は激アツ。

そして最後。つくしの母と風間の妹のページですね。風間のおかげでつくしの世界は広がり、つくしのおかげで風間は風間で救われている。のを、一番身近に感じていた母・妹の立場で気づき感謝している。このページは本誌では同じ見開きではなく、まず母、ページを捲ると妹…という構図で描いています。ページをめくるときの衝撃がありましたよねー…畳み掛けてきた感じ。

素晴らしい展開でした。ここまで読んでのご褒美がたっぷり。

ここまで書いたのであれですけど、試合終盤につくしが「ごめんね成神さん」と我を強調して勝利をもぎ取ろうとするのに一人感動してました。

さてこれから…どうなるんだろう。おそらくですけど、スラムダンクで言えば山王戦、H2で言えば明和第一戦、タッチで言えば須見工戦のような…そんな感じの、作品としての大いなる集大成的試合になったのではないかな…と思います。どうだろうなー次の試合もあるかな…。

あるとしたらなんとなーく沖縄代表でナッキーのアレコレがありそうな気がするのだけど、こんな超絶クライマックスみたいな試合をした後にどうするんだろう…。いろいろと決意を固めたメンバーたちだからこそ見せられる試合展開があるかもしれない。(水樹の怪我はアレだけど…)

いずれにせよ物語はいよいよ終盤だなぁ。連載が終わったらめっちゃロス感味わいそう…