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映画『THE FIRST SLAM DUNK』感想/漫画のコマの"向こう側"を浴びる体験

映画『THE FIRST SLAM DUNK』を観た。

公開にいたるまでの経緯を横目で見ながら、アニメ化、映画化…といった"○○化"の難しさを感じていた。原作が好きな人、アニメ版が好きな人、スラムダンクのキャラクターが好きな人、セリフ、演出、エピソードが好きな人エトセトラエトセトラ。これほどまで長く愛される作品であれば、その人の中にあるスラムダンクは千差万別であり、求めるものは異なるだろう。こればかりは"○○化"においては避けては通れないものだなと思う。

私といえば、原作スラムダンクは何十回も読むほどのめり込んだものの、たまたま?アニメは通らずにいた。映画館でドラゴンボールと一緒にやっていたことのを観た覚えはあるし、動くフンフンディフェンスもなんとなく記憶にある。あと主題歌…。

と、まぁそんな立場だった私がこの映画を観た感想になります。結論から言えば、めちゃくちゃよかった。もっかい観たい。

 

※映画『THE FIRST SLAM DUNK』の内容に言及します。お気をつけください。

slamdunk-movie.jp

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予告編、最初の1on1の時点で「バスケシーンの臨場感がすごそう」と思った。モーションキャプチャーを用いたCGの良さが本当によく出ていた。

冒頭、まさかの宮城リョータの過去パートから始まる。原作31巻と「あれから10日後」以外の情報は持っていないので、実は語られていた内容なのかもしれないが、リョータにそんな過去があったのかと。辛い話やな……と思いつつ、一部は沢北にも通ずる感じ(子どもの頃から年上相手に1on1)あるなと思ったりした。

場面が変わり、試合前のロッカールーム。線画で書かれたリョータに色が付き、三井が現れ…湘北のメンバーが揃っていくシーンでもう大興奮だった。もうこの時点で私はこの映画のワクワク感に支配されていた。舞台が山王戦だとわかる。原作でも一番長い時間をかけて描かれた、バスケットのおもしろさをぎゅっと詰め込んだ一戦だ。

スラムダンクの「バスケットボール」の映像化

先述の通り、CGだからこその表現により、「漫画で描かれていたバスケシーンは、こういう感じだったのだ」が見事に補完される。漫画で観たコマには入りきっていないメンバーもいる。あのコマの向こう側が描かれているのだ。コマとコマの間にはこういった動きがあるのだ。

これは「アニメ映画化」というよりも「映像化」だろう。CGで描かれるバスケの試合を…名作「スラムダンクの山王戦」が映像化されたものを私は見ている。イチノがリョータのボールを奪い。リョータが猛ダッシュで取り返し、桜木とのアリウープを決める。深津は動じずに点を返す。ノールックパスの速さ、シュートが入ったあと後ろ走りでディフェンスに戻る姿、走りながらの「よっしゃ」的なタッチ。最高かよ、最高かよ…。

オリンピックやスポーツニュースで観た「バスケットボール」の試合って、たしかにこんなだった!密接したディフェンス、パスコースを塞ぐように立ちふさがる姿、ボールを取られまいと右へ左へ手を伸ばす様。ああ、バスケットボールだ。とてもクオリティの高い映像で、スラムダンクのバスケットボールが描かれている。

惜しくもカットされたシーンはあったが、再現されているところは細やかに再現されていた。結構好きなのが、オフェンス時にゴリが河田にマークされながらうまく足を入れて攻める体制を作るところ。「うまいっ」と周りが言うことも含めて、緻密な描写で「うまさ」が伝わった。桜木とゴリがバチンしたあと桜木の手が真赤になるところもサラッと映っていたし、桜木リョータ三井が「むんっ」とポーズを決めているところも何気なく描写されていた。沢北が「よーーーーいドン!!」するところのクイックさたまらなかったな。

ゾーンプレスの恐ろしさが映像だとよくわかる。三井がパスを入れる段階からのえげつないプレスと、リョータに出したあとの沢北の寄せ。こんななのか!それは怖いわ!!

初めてゾーンを突破する時のゴリのフェイントからのリョータの切込み隊長っぷりもしびれたし、やはり何より一番は「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ」のところだろう。音楽の入りも、迫力あふれる映像も、最高だった。もちろん4点プレーにつながる三井へのパスもたまらない。

ああ、もう。すごい。すごいよ。繰り返しになるが、漫画で描かれていたものの「コマには入り切らなかったところ」「コマとコマの間の動き」が映像になっている。なんて楽しいのだろう。音だってそう。ボールの音、コートの音、観客の応援…どれもがこだわりをもって作られている。漫画を読みながら妄想していた部分が、漫画を読みながら自分で身振り手振り再現していた部分が、これだよ!これだよ!!!と脳内に構築される。

差し込まれる過去編

個人的に惜しいと思ったところは、所々で挟まる回想シーンだろう。回想シーン自体は悪くないと思っているし、所々の挟まり方も、試合展開とリンクしている演出だということも理解している。リョータの過去の掘り起こし、バスケにかける思い、優秀な兄を亡くし、どこかで抱いていたであろうコンプレックス、兄が立つはずだった舞台に自分が立つことの複雑な思いなど。それを乗り越えての今、格上相手に立ち向かうリョータが際立っている。

しかしあまりにも試合シーンが良すぎた。試合がよすぎるばっかりに、回想シーンが差し込まれることでテンポが悪くなっているのを感じた。「試合を見せてくれよ!!」と思ってしまった。繰り返すが内容自体が悪いわけではない。何気に三井さんと衝突したところなんかは原作でもちゃんと描かれてなかったし貴重だなと思ったし、リョータが母に書きかけた手紙はぐっときたし、試合を見に来てくれた母の「いけ…!」から呼応する、「ドリブルこそ~」のシーンは間違いなく本作のハイライトだ。しかし、その後にもまた別のシーンが挟まってしまったりと、試合の見せ場になればなるほどテンポが崩れてしまう(これは過去シーンではなく、花道の重要シーンだったりするから、山王戦的にはしょうがないのだけど…)。大事なシーンではあるだけに、どうすれば正解かもわからない。BDが出るなら試合シーンだけを編集した特別バージョンも同封してくれとすら思った。特別編集版で応援上映やってくれ。

良い音響、良い設備でもう一度観たい

いろいろと思うことはあったが、よりよい設備でもう一度観たいと思った。テンポのことも、それを念頭に置いてみたらあまり気にならないかもしれない。

良かったところを挙げだしたらキリがない。河田が自分のシュートをセルフリカバリーするところとか、流川と沢北の1on1の緊張感とか、三井さんのすごいところとか。彩子さんのかわいいところとか。いやほんとかわいい。

残念ながらというか、まぁしょうがないのが魚住が乱入できないところ、花道がケガしたときに晴子ちゃんたちが観客席からベンチに突撃できないところなどはある。花道VS河田弟があまり描写されなかったのは残念。斜め45度で流川とぶつかるシーンもなかった。桜木を主人公として、スラムダンク1巻~の積み重ねがあるからこそのエピソードを期待した方々にとっては物足りない内容だったかもしれない。それは流川、三井、赤木…本作主人公として描かれたリョータにしても全部描ききれたわけではない。「2年間も待たせやがって…」などのメガネくんのモノローグはみなさんの心で補完してください。ゴリも泣かないけど、きっと泣いてたよ。そういう補完できるでしょ。「歴史に名を刻め~オマエラ!」の応援だってできるでしょ。

そんなこんな言いたいことはあるけれど、「スラムダンク山王戦」の映像化という意味で、マジでおもしろすぎた。最後は安易な言葉になってしまったが、本当によかった。漫画を読みながら映像や音をイメージしていたものが、まさに目の前で繰り広げられていた。よりリアルなバスケの試合として、より躍動感のあるものとして。それだけで私は幸せだった。ずっと楽しかった。良いものを観た。

第ゼロ感

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