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あゝまた増えるぞ謎仕事。悲しい働き方改革迷走体験

まだまだ記憶に新しい電通事件や、今年度より改定された労働基準法に伴い、『働き方改革』ないしは『長時間労働の是正』といったようなものが謳われている企業も多くなっているかと思います。

また、本年11月1日には過労死ラインの見直し検討が2020年から始まるということで、長時間労働に対しての社会的注目はより一層高まっているところです。

こういった話題が出ると「俺なんて月200時間当たり前」みたいなマウントトークが繰り広げられやすいのだけれど、それは今回置いといて…。

必要な覚悟

こういった長時間労働をどないなくすねん、という話においては、私の見ている範囲ではありますが、経営陣の覚悟というのがどうしても必要になってくると思います。

 

それこそ発端となった電通数百億円の投資を行い長時間労働の削減、年休消化率の向上→社員の労働環境の改革へと結びつけています。

環境・基盤整備における改革の柱は、「労務管理の徹底と見守りの強化」「業務棚卸しによるワークダイエットと業務プロセスの改善」「ICT等の社内インフラの強化によるワークスタイルのスマート化」「オフィス環境の改善」「時間価値最大化を実現する働き方諸制度の導入」「健康管理体制の強化」「社員の成長支援」などであり、この2年間で実施した施策の数は3桁に及びました。その中には、2018年に新たに導入した「インプットホリデー」・「勤務間インターバル」・「健康経営のためのバイタリティ・ノート」などの施策も含まれています。

(中略)

当社は「改革の推進および将来の成長に向けた基盤整備」のため、2017年に70億円、2018年に113億円、計183億円のコスト投入を行いました。主な内訳は、増員等の人件費で約35億円(2017年に13億円、2018年に22億円、2年間で約350名の増員)、業務効率化のための機械化・アウトソーシング化や業務システム等の構築ならびに労務管理の徹底費用で約116億円(2017年に40億円、2018年に76億円)、オフィス環境の改善で約32億円(2017年に17億円、2018年に15億円)となります。

労働環境改革の進捗状況について - ニュースリリース一覧 - ニュース - 電通

 単体で7千人弱、連結で6万人強が勤める電通なのでかかる投資額も生半可ではありませんが、ここではつまり"並大抵の覚悟ではない"本気の投資を行って環境改善を行っていることが見て取れます。実態はどうかはわかりませんが、少なくとも自動化による『自動化できる仕事は自動化する』などによる圧縮は功を奏していると聞きます。 

人的、金銭的リソースを投入する以外の"覚悟"で言えば、お客さんが離れていくのも覚悟でいきなり『残業完全禁止』をして、結果的に売上もあがったし社員の離職も減ったし生産性もあがったし…というアクシアさんの例があります。

残業ゼロを実現するために必要な4つのこと - 株式会社アクシア 

以前までだとそこまで言われてしまうと「残業でカバー」という伝家の宝刀を抜くしかありませんでした。でも残業は絶対にやらないと決めました。でも残業しないとそういう顧客の要求を実現することができません。実現できなければその顧客を失うことになるかもしれません。

どうすれば良いか随分と悩みました。そして悩み抜いた末に出した結論。

顧客の無茶な要求は飲まない

顧客の要求に応えなければその顧客を失うことになるかもしれない。そういう恐怖はどの会社でも当然あると思います。だから無茶な要求にもついつい応えてしまうんですよね。

でもそういう無茶な要求を飲んでいたら残業ゼロで業務を回すことはどうやったって実現不可能になってしまいます。残業ゼロを実現するためには無茶な要求は断る必要性が出てきたのです。

残業禁止にしたら顧客を選ばざるをえなくなった話 - 株式会社アクシア

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多くの企業が陥ってそうな悲しい失敗

と、こういう成功例もありますが、おそらく多くの失敗例…悲しい事例が世には溢れているのではないでしょうか。いろいろと中途半端な取り組み意識の中発生しがちな事例を実体験もありますが…考えてみました。

例1.上限規制といたちごっこと疲弊する人事

まず規制

おそらく一番多そうなのが『○○時間以上の残業は禁止』というお触れです。

36協定もありますし、過労死ラインなんかもありますので、それ以上はダメだ!という大号令がトップから投げられます。具体的な方法はみんなで考えなさい。

始まるサービス残業

具体的な仕事の見直しなどが図られればよいのですが、そうはいっても日々の仕事があるのでそんなことは考えられない。○○時間以上の残業が付きそうな場合、"勤務表に記録しない"といったサービス残業謳歌します。見せかけのルール遵守。

PCログや入退館記録等との突合

そもそも厚労省ガイドラインにもある通り、『客観的データ』をもって勤務時間を把握しましょうということで、こういったツールが導入されることで「お前虚偽の申告しとるやないか!」とサービス残業は白日のもとにさらされます。これで一安心?

客観的記録だって完全じゃない

会社PCでログが残るなら!と持ち帰ってみたり、「PCの調子が悪いみたいで…」とログが間違っている、という主張をしたりとあの手この手が出てきます。

最初と最後が長くても、俺は休憩をしているぞ

最後の手段、「休憩しているテイの時間を増やす」が発動!9時〜22時まで働いているけど18〜21時は中抜けでした!定時後の残業は実は1時間なんです!だから上限は超えてません!

今度は休憩時間の多さの照合までやらなあかんの…?

こんなイタチごっこで人事の仕事は増えるばかり。鬼の首を取ったように「この人休憩多いです!」なんてことして、なーんでこんな役回りを…。

例2.申請書主義、見回り主義

残業するには申請が必要

「○時以降残業するなら事前に申請書を提出するように」というのもよくあるパターン。そんなデイリーじゃやってられんわい!と現場の反発が起き、ずるずると当日直前提出や事後提出も緩和される未来がある。

申請手続きがめんどうで残業しなくなるケースもあるかもしれないが、申請手続きがめんどうだから残業を隠すようなケースも出てくるぞ!っていうか申請手続きがめんどうで残業が増えることもある。

申請が出ているかの確認という作業が増える

申請を出す人あらば、それを受け取る人もあり。

「この人申請がないのに残業しているぞ!」なんて照合をする手間が人事に発生します。もはや目的がすり替わってきている。

○時以降は禁止なので、見回って帰らせろ!

もうトータルの残業時間とかではなく、その日その日のリミットが生まれる。

でも、…えっ、見回るために○時まで残る我々の拘束時間はなんなの…。

ポロポロ出てくる例外

ここが一番大きいのですが、「お客さんが求めているから」「この時期は格別に忙しいから」どうしてもと例外を認めてほしい現場の声。売上のため、信頼のため…。…じゃあしょうがない、特別な申請書を出しなさい!…例外を申請さえすればいい!という風潮への転換が目の前に

例外の申請、されてる?どんだけ例外が出てる?

まーーーーーたこういったチェックが必要になるんかい!

こういったチェックで人事の残業がうなぎのぼりや!例外が浸透しすぎて、もはやなぁなぁになってくるのもお決まりの流れ。

例3.兼務プロジェクト、泥沼に沈む

働き方改革プロジェクトが発足

長時間労働を是正するため、多様な働き方に対応するため、プロジェクトを発足だ!リーダーはあなた、メンバーはキミ、キミ、キミ、キミ!残業を減らす取り組みを考えてくれ!あと多様な働き方ってことでテレワークとか女性活躍とかも考えよう。あ、でも本務の仕事もやってね。

そもそも本務が忙しい→増える残業

プロジェクト組まなきゃいけないくらい残業が常態化している会社であれば、基本的に日々の業務も忙しい、なんて当たり前の状態で、兼務プロジェクトって仕事の純増やないかーい。偉い人は「働き方改革プロジェクトメンバーが一番残業してたら説得力がないぞ」なんて言ってきてブチきれそう!

みんなが片手間では進むものも進まない

『仕事の棚卸しと、優先順位の整理』『やらなくていい仕事の仕分け』『自動化できる仕事の自動化』…。言葉に出すと簡単だけれど、ガッ!!って力を入れてやらないと、こんなのスキマ時間じゃなかなかできないんだよね…。

日々忙しい他の社員の手を借りる罪悪感

棚卸しのためのヒアリングがしたいけど、みんなその日その日が忙しいからまとまった時間が取れないよ…。自分自身も本務が忙しいし…。

そもそも予算が…

人的リソースの少なさはもちろん、金銭的リソースも少ない…。「知恵を絞れ」とは言うものの、抜本的に変えるにはお金がかかる…。お金をかけずにできるとすれば、ノー残業デーキャンペーンとか、○時以降原則禁止の活動をするとか…申請しなきゃ残業できない形式にするか!(他事例のループへ) 

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本質的に何が重要なのか

やるならやろう

やり方は様々だと思うのです。『業務の棚卸しをして、無駄な仕事をなくす』『機械にできる仕事は機械にやらせる』『無駄な申請手続きをなくす(電子化する)』『無理な仕事は請けないようにする』『業務を標準化して、複数人でケアできるようにする』などなど。その会社によってボトルネックは違うので、その分析をすることから始まるのだとも思います。

それらを実行するには…理想論に近いのですが、最初に述べたように上の階層からの覚悟が必要なんだと思います。徹底する覚悟。

トップが『怒る』だけでは、意識低めな管理職は「怒られないように上限超過しないようにしよう」と、怒られない道筋を考えがち。

労働環境を変えるための環境の構築…全社を上げて取り組む方針の策定、人的リソースとそれに集中してもらう覚悟。上記で上げた取り組みに本気で取り組む、取り組ませる覚悟。PCの力で省力化?年寄りにはよくわからん…。と特定の人だけそれを免除されてしまっては、何も成立しないんです。みんなスケジュールはオンラインに入れよう!つってんのに、部長だけ手帳で管理してたらそれだけで崩壊するんです。そういった方への丁寧なレクチャーに時間を割くことだって必要。

そのためには瞬間風速的に時間も労力がかかります。そらそうです。今やっている仕事とは別に、今やっている仕事たちを整理する仕事をするわけですから。それに力を入れることで、本業にかけている時間を減らす必要も出てくるかもしれません。つまり、売上にも影響が出るかもしれない。

そういった事を許容する覚悟、方針がなければ、どうしても『片手間』で『手間をかけない』程度の取り組みしかできず、それがかえって大きな手間を生むことにもなります。手間を増やすだけですめばいいですが、「またこんなことやらされるのか」といった上層部への不信感、あきれ感が出てくるのも時間の問題です。

覚悟といえば、『例外を作らない』ことも大事。

納期が近いからと言って、「特別な残業」を例外として認めてしまえば、その例外が組織のルールとなってしまうからです。それでは何か特別な理由があれば残業しても良いという意識が組織の中に植え付けられてしまいます。

「残業ゼロ」を73ヶ月間続けた記録 - 株式会社アクシア

 ここがずるずるになることでなぁなぁの関係になります。人事もチェックが溢れてきて「あぁーはいはい」みたいになる。特例がまかり通ってくるともうだめです。きっちりチェックするのが無駄骨になる。

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残業を減らす目的

何がゴールなのかと言う話。ただ減らすだけを目的にしても、それは現場には響かないよ。

経営的インパクトで言えば、残業を減らすと残業代は減ります。残業代って結構バカにならない人件費で、100人の従業員で、基本給平均30万だとして…。1日8時間で週休二日で…1ヶ月20営業日で160時間…。

30万÷160時間=1,875円 1,875円×1.25の割増=2,344円が残業単価。

残業10時間減ると、2,344×10時間×12ヶ月×100人で…28,128,000円!年間3千万弱変わるわけですね。すげー。計算あってる?

人件費ビビって毎年の昇給額をしょっぱいものにするより、残業がんばって減らすほうが急務だったり。

経営力を鍛える人事のデータ分析30

経営力を鍛える人事のデータ分析30

 

 まぁそういうこともあって経営的には残業減らすの大事だなー!って。でも悲しいかな『残業代ありきの生活費』プラン考えている人も多いのですよね。生活残業とも言う。まぁ、そうじゃなくても、好きで残業してないんだけど、その報いに残業代をもらっている状況から、それ以上に効率化上げてがんばった結果残業代も減るとなると…そりゃないよというのもある。なので、削減できた分は還元があるといいよね。生産性アップが評価項目だったり。がんばる指針にもなる。

残業減らせ減らせと音頭を取るだけじゃなくて、減らした先に経営的には嬉しいことがあるんだし、働く側もそれを目指そうと思わないとね。

ちょっと話が逸れたな。

離職防止と採用力とやる気と活力

てんこ盛った見出しですが、やっぱりこれだ。

充実して楽しい残業が多いならいざしらず、本業とは違う部分の手間で残業になるだとか、本業も無駄な手間が多すぎて残業になるだとか、そういうことが重なるとイヤんなる。体を壊してしまうかもしれない。それでまたしわ寄せが行って…売上も下がるし…でも人が減ると残業も増えて…またやめるし…という悪循環。

『残業=悪』と言い切るんじゃなくて、『残業しなきゃどうにもならん状況=悪』なんかもね。それを、『なんとかなる』状況に持ってくことで、力を割くべきところに力を割く!ここに持っていくことで、健全に回っていくんだと思います。

途中で取り上げた悲しい例ってば、『本業以外の手間をやけに増やして余計に残業を増やす』悪手であり、しかし手軽に思いついて取り組んでしまいがちで、かつ『やっている感がある』ので厄介なんですなー。

 

私も人事スタッフにいる中で、こんな状況が生まれているところに入社したり、トップから降ってくる案件が典型的にコレであわわ〜となったりしていますが、これにぶーぶー言うだけじゃなくて、これぞという信念で対抗していくことが求められますな。草の根草の根。 

職場の問題地図 ~「で、どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方

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