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新シリーズ『志記』開幕。髙田郁先生の描く新たな『灯』を見届けよう

髙田郁先生の新シリーズ『志記』が発売された!新シリーズ!嬉しい!

髙田郁先生の書き下ろし時代小説シリーズと言えば、料理人の姿を描いた『みをつくし料理帖』、商人の姿を描いた『あきない正傳 金と銀』があり、どちらも女性主人公が、男社会の中で信念の火を絶やさず、真っ当に真摯に料理人/商人としての道を進んでいく物語となっている。

こういった時代背景もあり、いわゆる「女性が男性社会の中で道を切り開くカタルシス」は多少あるものの、一番描きたいのは『真っ当に真摯に歩む人の道が、どうか明るくありますように』という筆者の願いなのではと思っている。

前例がなかったとしても自分たちが礎となることができる。非常識だとしても真っ当に真摯に成すことをすれば、それに気づいてくれる人が出てくる。

作中で主人公たちの足を引っ張っる人には男も女もいるし、逆に男でも女でも揺らがぬ信念を持ち、真っ当に人に向き合い生きて周囲からの信頼を得ている人もいる。真っ当に突き進む主人公たちの姿を見て支援してくる人も同様に男女問わず多く登場する。

天災も多く、医術もそこまで発展していない激動の時代のため、いきなり窮地に立つこともある。積み上げたものが0になることもある。この時代の火は特に恐ろしい。それでも、それでも…と力強く生きる人たちの姿が描かれる。

作中ではガンガン月日が過ぎていくので、その人物を描いた大河ドラマのような印象を受ける。最後の方になると「思えば遠くへ来たものだ…」と感慨深くなる。あの頃小さかったあの子がねえ…みたいな。あの時蒔いた種が芽生えることもあるし、あの時の縁が巡り巡ってつながるようなことがある。シリーズを追いかけて読む楽しさが詰まっている。

そんな髙田郁先生の小説の新シリーズですよ!いやあ~文庫で書き下ろしシリーズ化してくれることのありがたさよ。

「あらすじ」と冒頭の「登場人物紹介」がまぁまぁのネタバレで焦る。まぁネタバレと言うか…プロローグ部分だから大した影響はないのだけれど…。

今回はなんとW主人公。医学の道を志す美津と、刀鍛冶としての道を志す暁。今作で興味深いのは、女医者も女鍛冶も「珍しいけど、前例がないわけではない」ということ。レジェンド的に語られる人物が存在する。完全に禁じられている時代背景ではないんだなぁ。……とはいえ、珍しいことにかわりない。これから二人はどのような道を歩み、それぞれどのような影響を与えあって進んでいくのだろう。

……と、読み始めたその日に一気に読んでしまった。時代小説ならではの当時の用語や習慣などはあるのだけど、丁寧に情景を描写されていることでぐいぐい読ませてくれるのが髙田郁先生。『みをつくし』も『あきない正傳』もドラマ化した影響があるのかないのか、丁寧にかつ活き活きと描かれる登場人物たちの様子に、もうドラマ化した映像が脳裏に浮かびましたね。静かなシーンも、わちゃわちゃしたシーンも、ああこれは大河ドラマのワンシーンっぽいな。あるいは朝ドラっぽいな。なんて思いながら読んでいた。読んでいたらあっという間に1巻が終わっていた。続きを早く読みたいな。

そしてそして、なんといっても…なんといっても最後に出てきたお店がね。ファンサービス的なものなのかな?それとも…?まぁ、この世界で、あの地で評判が良い店と言えば言わずもがなそうなるよね、みたいな納得感がある。嬉しいなあ。

続きが楽しみなシリーズがある、というのは幸せなことですね。続きを首を長くして待ちましょう。

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