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心の灯火を抱きしめて/「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」感想【ネタバレ】

鬼滅の刃は「遅ればせながらアニメをアマプラで見た勢」でした。原作は読んでおらず、タイムラインで原作を読んだ方々がざわついているのを見たり見ないふりをしたりしていた、そんな立ち位置だった私が映画を見た感想記事になります。

・「おもしろいと聞くなぁ」ということで入院中にアニメ1話を視聴してダメージを受けた。

・無事にアニメは完走した。内容というより、技の活き方やキャラの個性の出し方により私の中の「男の子」をいい感じに呼び覚まされ、また映像のクオリティに引き込まれた。

・タイムラインで原作を読んでいる方がざわつく様を見ていたので、ヒヤヒヤしながら劇場版を見ることになった。(今後それなりに悲しいことが起きるんだろうなと推測できるけど、具体的に誰がどうなるのかは知らない、という状況

金田一少年を読んでいたから「シャンデリアがやばい」という先入観を持ったままオペラ座の怪人を見た感覚に近い

 

※本記事は「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」のネタバレがあります。また、原作の「今後」についてふんわりとだけ知って(しまって)いるので、まっっったく原作の情報を知らない方にとってはネタバレと思う部分があるかもしれません。 

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不安を乗せて列車は走る

前情報なく無垢な気持ちで映画を見れるか…といえばそうでもないのがつらい。「結果的にいっぱい悲しい」という「今後」のふんわりした情報だけ知っているため不安に駆られながらの鑑賞にならざるを得ない。

具体的に言えばもう煉獄さんよ。煉獄さん大丈夫なの…。いやーでも柱のお披露目から間もないんだから、たとえ煉獄さんに悲劇が起きるとしたとて、十分「火」なんていうハイパー強い柱アッピールをしてからだよね… なんていう雑念がすごい。アニメで初登場したときから結構好きだったんですよね煉獄さん。ビジュアルもしかり、明朗快活!!!みたいな。カラッと熱い湿り気の無いキャラが、混じりけのない炎の煌めきを感じさせるのがよかった。きっと強い。

…といった前情報も何も無いまま本編が始まるのにはびっくりした。ちょっとくらい「今までのあらすじ」があるのかと思えばそんなことはなく。ただ、序盤のやりとりだけで各キャラクターの性格や本ミッションの背景が描写されるので、ちょっと忘れかけていた私も「ああそうね、そうね」となるなどできました。

 

煉獄さんの夢ツラない?

やっぱりアニキはすげーや!!の夢は誰の夢なんですかね。私達ですか。「敵の中には絶対こういう”ンフフ”って笑うタイプがいるよね」代表選手魘夢さんによって皆が夢の世界に落とされてしまう。

あーなるほどね、それぞれの幸せな夢を見せて、その間にアレをアレするわけですね。炭治郎は家族との「当たり前」だった暮らし。善逸は禰豆子との微笑ましいデート、伊之助はなんですかねあれ。親分として強そうな敵(列車モンスター)と闘う夢。それぞれの個性が出ておりますよね。デフォルメみんなたちかわいいな。

そんな中の煉獄さんの夢はいったいなんだろうなあ。なんというか、煉獄さんだけシンプルな「回想」みがある。「こうあったらいいのに」という夢なのであれば、父親に認められたりしているのだろうけど、そうではない。

というか煉獄さんについて…私ったら何も知らない…!!という立場としてはこれが「夢(現実としてなかったこと)」なのか「回想(在りし日の思い出)」なのか判別がつかない。弟に兄の姿を見せたのはリアルなのか、「言いたかったこと」なのか。話的に煉獄さんの生家に行くことになるなら、このあたりは明らかになるのかな。父上の話も。

振り返らない炭治郎と涙腺を爆発させる観客

「本当なら」炭治郎はこの穏やかな暮らしをしていたはずなんだ。剣を振るうことなく、家族と幸せな生活を送っていたはずだった。戦いや修練とは遠い世界にいたはずだった。「本当なら」「本当なら」…。ここの切実な叫びは響いた…コレが4DXか…私の顔にも水が伝ってるわ…と多くの観客が体感していたのではないだろうか。

「行かなければいけない」と覚悟して走り出す矢先に禰豆子を登場させるこの…ッ!ここは泣いてしまうところだなぁ。「竈門炭治郎のうた」アレンジが流れているのは本当にずるいよね…いろんなものが走馬灯のようによぎって脳内エレクトリカルパレードになった(複雑に絡み合う感情により「ただただ辛い」としか思えなくなるステータスになった)

ここの花江夏樹さんの演技がすごすぎる。すごすぎて「すごすぎる」ということで頭がいっぱいになってしまった。純粋に映画に浸りなさいよ…そういうとこだぞでご…。…俺の知ってる花江夏樹は…花江夏樹は…


【闇のゲーム】声優が全力で『番犬ガオガオ』をやるとこうなる

夢の攻略、反撃開始

夢の中の自分を殺すことで夢から脱出できるシステムがとんでもない…。まさに鬼の所業…鬼だけに…

ここから反撃のターンです。頭突き禰豆子かわいいし、なでなで要求禰豆子がかわいい。禰豆子がかわいい。

列車の上での戦いというのは由緒正しきアクションの系譜という感じがしますね。そもそも列車と闘うゲームもありましてね。FF6と言うのですが…。

強制的に夢を見せられるも自死して自我を取り戻す炭治郎の精神力が強すぎる。ここではまぁまぁの悪夢を見せられ観客としてはホラーだけれど、炭治郎にとっては逆効果である。「そんなこと言うわけ無いだろォァァァァァ!!!」という突っ込みパワーの強さに一周して笑ってしまった。そうだそうだバーカバーカ!!!!ふざけんなアホ!!(成人男性の感想記事とは思えない)

 「融合」すると触手になりがち

倒した!と思ったら列車と融合していたようで、ここからが本番でした。列車と闘うんですね。FF6ではフェニックスの尾で一撃だったり、列車を持ち上げてドーンしたりすることができたのですが、そうはいかなそうです。


【FF6】 魔列車にメテオストライク

 

見出しのとおりですが、なぜこういった作品では「融合」=触手パワーが発動するのか。この触手の描写がちょっとえげつなさすぎて、「これufotableさんの本領発揮ポイントかぁ…」となるなどしました。Fate/Zeroのキャスターを強制的に思い出すことになりました。あーあったね。あったあった。あのufotableさんかーみたいなところある。

魔列車と闘うFF6は、後々「城に寄生した触手」と闘う場面もあるのでそれを思い出すことにもなりますね。私だけか?

まぁなんというか、触手系の敵は「数は多いしキリがない」というのが定番ですね。動かす方も動かす方で大変だよな。列車全車両となるとどういう意識で操作するのかという話。五両分一気に守っちゃう煉獄さん(登場シーン熱かったなぁ~)、伊之助の広範囲攻撃はこういった敵との相性が良いですな。善逸~!善逸~!!居合が嫌いな男の子はいないんですよ~善逸~!!

キンッ で ドンッ!! はロマンなんですよ~~でお馴染み善逸!見せ場超良かったですねー。「霹靂」も「一閃」も大好物です。

このようにおりゃおりゃとぶった切れて見せ場が作れる意味でも触手って便利なのかもしれない。反面作画は死ぬほど大変そうなので便利ではないのかもしれない。

煉獄さんの「パッと判断して的確な指示」するところはトキメキ煌めきポイントですよね~冒頭の「うまい!うまい!」や噛み合うのかそうでないのかの明朗快活コミュニケーションから一転「やるときゃやるんだぜこの人はよォ…」感が突出しています。好きですよね~参っちゃうね~。

ハイパーつよつよな人たち、一般人の不意打ちでやられがちで切ない

 「あの時この傷を負っていなければ」みたいなifに、「本筋の敵とは関係ないところでのダメージ/ロス」があるのですが、ソレって本当これだよね。炭治郎めちゃくちゃノーダメージで来てたけど、運転手さんの不意打ちアタックで大ダメージを受けます。こういうの切ないんだよな~。当人たちや読者の外側にいる、「その場に居合わせた状況や判断で動く」一般人の意識外アタック。封神演義の…ほら…(多くの人の心に眠る悲しい記憶を呼び起こす…)

このダメージがなかったらどうだったのか。どうだったのだろう。この後に訪れる展開的に、炭治郎に何かができたのかはわからない。ただ、炭治郎自身として「何もできなかった」歯がゆさを一回り大きくさせたのは間違いない気がするんだよなぁ。


…話を戻す。痛みを超えて魔列車魘夢を攻略。悪夢ラッシュを受けた炭治郎がうっかり現実世界で自死しかけたのは焦りましたね。伊之助がかっこいいんだよな…。クライマックスのアクションは見事でした。無事に倒し、列車も派手に脱線していくけれど、煉獄さんの大技大盤振る舞いのおかげ(と後から知る)で事なきを得る。

いや列車に融合したまま朝を迎えたらどうするつもりやってん…とは今にして思う。融合したら後戻りはできない的な感じだった印象を受けたんだけど。乗客パワーをひとしきり得て、朝日輝くウイニングロードを駆け…天に登る列車…!!

銀河鉄道999

銀河鉄道999

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煉獄さんの見せ場思いの外少ないんとちゃう?→どういうことなの…

 猗窩座(聞き取れないし聞き取れても書けない)の登場。え、何しに来たん…(善逸の感想は本当に正しい)

ここから超サイヤ人同士の戦いというか、上位職同士の戦いみたいなアレがアレします。「何か一つできるようになっても またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ」の展開。那田蜘蛛山での死闘→機能回復訓練→次のミッション!と来て「パワーアップした主人公の活躍!!」という展開の後にどでかい壁を持ってくる。こう考えると随分効果的だなぁ。ちょっとやそっとで「柱」との距離は縮まらないことを知らしめ、また「上弦」の格の違いを見せつけられる。

猗窩座が煉獄さんを下の名前で呼んで、好敵手と書いてライバルと読むような感じになって、武を極めるだとかなんか正統派武道家みたいな態度してるのはちゃんちゃらおかしいわけですよ。「超速再生」「基本的に不死」みたいな状態で生身の人間を相手にする時点でアンフェアの極みのチートモードなんですよね。ダメージを受けても影響がないまま相手を攻撃できるなんてのはG級装備で下位モンスターをいたぶっているようなもんですよ。なーにを偉そうに「同等」みたいな気でいるんですか。夜しか活動できないのは3千歩譲ったとして、「戦闘中は再生を使わない」くらいの気概で挑んできなさいよアンタ。バカ。

 

いやーーそれはともかく、煉獄さんバトルは超絶熱かった…。剣戟の描写も炎の呼吸の技それぞれの迫力たるや。最終奥義放った時の興奮ですよ。そして最後、もうだめかと思った時の回想→覚醒の反撃!!うおおおー!!いけー!!煉獄さん!首を!そう!それを!それを…!振り抜いてくれ!振り抜いてくれ煉獄さん!!煉獄ざぁぁぁぁぁん!!!!!せめて相討ちを…もうその傷では助かるまい…その命果てる前に…倒してくれ…

と願う中、動く炭治郎!伊之助!そうだ!足を止めている手負いの相手だ、君たちの助力で、協力で、止めを刺してくれ!!!!日の出も近い!止めをさせずとも足止めを長引かせるだけでも良い…ッッ!

 

 

 

…と、我々の願いも虚しく、トカゲのしっぽのように体を切断し、逃げていく猗窩座。

敗走撤退する背中に炭治郎が放つセリフはまったくもってド正論で、あれを心の底から叫んでくれた炭治郎は煉獄さんだけでなく我々観客の心に救いを与えてくれました。そうだとも、そうだとも。こんなアンフェアな状況にいる鬼殺隊と同じ土俵で戦っているなどと勘違いをしているんじゃあないよ。あそこの叫びは夢から覚める時の炭治郎の熱演と同様に心に響いたなあ。卑怯者と叫ぶ炭治郎のシーンはよかった。声を枯らしながら、心の底から叫ぶ炭治郎…。ここの迫力にもまた涙が出てしまうな…。花江夏樹さん…すげえんだな…。


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弔いのクライマックス

最後の十数分は本当に、煉獄さんの弔いですね。愛でもある。無限列車編は「家族」であったり「約束」「理想」と向き合う物語でもあった。柱になり父に認められることは叶わなかったけれど、煉獄さんにとって本当に大事だったのは弱きを守ること。亡き母との約束でもあったその思いは、最後に母にも認められ、自身の持つ力を正しく使えたことに満足したようにその命を終えた。

炭治郎と向き合って話すところ、陽の光が柔らかくて、先程までの「灼熱!!」って感じの煉獄さんから、優しい炎の煉獄さんに変わっていて、より一層目頭が熱くなってしまうんだよなぁ。


LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

エンドロールが素晴らしかったというか、追い打ちだったというか…「ああーそんなことしてきます!これはもう愛だね!!!?」と脳内の処理が追いつかなくなった。

今あらためて歌詞を見ながら聞いたらすごいね…すごいねこれ…心を燃やせ…ううう…。

託された幸せと 約束を超えて行く
振り返らずに進むから
前だけ向いて叫ぶから
心に炎を灯して
遠い未来まで…

見終えて

アニメシリーズで「劇場版か?」くらいのクオリティを浴びていたので、劇場版でハイパー劇場版クオリティを浴びても「やっぱすげえなあ鬼滅は…」などと平然としていたが、帰ってみると2時間以上の何かを全身に浴びていたようで、ぐったりしてしまった。感情面がごちゃごちゃになったこともあるだろうけど。

1秒にこれだけ情報を詰められるのかと驚愕した映像を最近摂取したこともあり、本作も(特にアクションシーン)の目の離せなさ、「ゆっくり再生したらより細部のこだわりが見えそう…えっ…ほんと…目まぐるしいとはこのこと…」と驚いてばかりだった。


【Official】Pokémon Special Music Video 「GOTCHA!」 | BUMP OF CHICKEN - Acacia

 

キャストのみなさんの演技も、「ここまで心揺さぶられるものなのか」と驚きと感心と。こういった作品に出会えた喜びを感じるようなところもあった。何目線で映画を見ているんでしょうかね。原作は完結しているとは言え、まだ先がある。アニメや映画で描かれるであろう続きも楽しみである。原作に手を付けるかどうか悩ましいところだ。

 

これから煉獄さんの生家に行くのだろうか。弟くんとのやり取りもあるのだろうか。父親がどうしてああなってしまったのかもわかるのだろうか。そしてヒノカミ神楽についての手がかりはあるのか。

他の「柱」たちもまだまだ活躍の場があるのだろう。チートプレイ天狗猗窩座くんの再登場はあるのだろうか。敗走の果てに無惨様に殺されてしまうのか、あるいは別の柱の刀の錆となるのか。

今回の出来事で一番精神的に?成長したのは伊之助だったようにも思える。煉獄さんの生き様を見た伊之助の、「覚悟を受け継いだ」感は心強く思える。

炭治郎がこの映画の中で「よし!がんばろう!!」と歩み出すでもなく、悲しみを噛み締めているシーンで終わったのが、この人物をよく表していたように思える。もとより優しい子だ。戦いとは縁のない暮らしをしていた子だ。「身近にいた人」を失う辛さを味わい、またここでも味わうことになった。簡単に立ち直れるわけがないんだ。夢の中で家族と会ってきたこともある。煉獄さんの戦いで無力感も味わった。けれど、これから辛いことがあっても、挫折しそうなことがあっても、煉獄さんから受け取った心の炎は、優しく強く燃え続けるのだろう。

でも今は、「大事な人を失って悲しい」「自分の無力さが悔しい」でいい。それが炭治郎の優しさで、揺るがぬ強さなのだろうから。

僕たちは燃え盛る旅の途中で出会い
手を取りそして離した 未来のために
夢が一つ叶うたび 僕は君を想うだろう
強くなりたいと願い 泣いた 決意を餞に


LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

感想記事のおすすめ

映画を見終えてまっさきにこちらのブログ記事を拝読しました。原作を読まれているからこそでもあるけど、「読む映画か?」と思うほどの詳細な描写とぐいぐい読ませる感想と。おすすめです。

kimotokanata.hatenablog.com