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なぜ「人事(管理部門)の説明」はわかりにくいのか。

 

書きます。

※「人事はじめ管理部門」は長すぎるので、ここでは端折って「人事」とします。総務や情シスや法務や経理も似たようなことが起きがちな気はしている。

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人事は正しく情報を拾わねばならない、伝えねばならない

まず、人事が何かしらの情報を社内に発信する背景には、何かしらの情報のインプットがある。例えば法の改正。法が変わるのであればそれに従わねばならないし、それを遵守させるよう啓発せねばならない。ただ、法改正などを網羅した資料は、自社に関係あることからないことまで様々なパターンが網羅されている難解なものが多い。

時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

↑例えばこれ。わかりやすい解説と言いながら24ページに渡る資料となっている。

「これをみんなに読んでもらえばいいじゃないか」と思うかもしれないが、人事が仕事をする上で必要不可欠な情報と、営業が仕事をする上で必要不可欠な情報の優先順位は大きく異なるため、情報に対して「理解しようとする」スタンスが大きく異なる。(もちろん、こういった労働環境や法律に対し熱心な社員もいる)

「大事なとこだけ」ということを考えると「全部大事」になりがち

法のような国として決まったことだけではない。人事として定める会社のルール、就業規則を始めとした各種規程、人事制度についても同じことが言える。これらは経営の方針や思想、制度の設計運用の方針などの様々な要素が組み合わさってできている。「新人事制度説明会」など、社内で開かれることもあるだろう。新たな制度が始まる、新たな運動が始まる、その背景には様々な要素を考慮した設計の背景がある。

あるからこそ、言いたくなってしまうし、それら数多の要素をもってしてこれが成り立っている、ということを伝えねばならない。抜けや漏れがあると誤解を生むし、正しく理解してもらわないといけない。そんな思いが積もって、人事の説明資料は情報がてんこもりになってしまう。

その結果何が起こるかと言えば「わかりにくい」「何が大事かわからない」「難しい用語が多い」「結局何をしたらよいのか」といった反応だ。

新入社員研修や管理職研修で、就業規則全文をまるっと貼り付けて読み上げたり(副教材で渡すならともかく、メインスライドに文字ばかり…)、新卒採用の説明会で会社概要や募集要項を1ページにギューッと詰め込んでみたり…。経験したことはないだろうか。

それでも構わず「ここに書いてあるのだから、読まないのが悪い」「言ったのだから、聞いていないのが悪い」で済ませるタイプの人事もいるだろう。制度やルールを司り、現場へ"下ろす"意識で人事というポジションに居てしまうと、このような思想に至ってしまうのかもしれない。

現場は「結局何をすればよいのか」「自分たちにどう影響するのか」を求めている

とても共感できる記事を読んだ。

当時、アメリカ本社からときどき送られてきた社内アナウンスメールのフォーマットがなかなか良かったので、今でもときどき使っています。 特に、このフォーマットは何かをお知らせするだけでなく、社員に何かしらのアクションをお願いするときに有用です。 (中略)

「何が起こりますか?対象者は誰ですか?何をしなければなりませんか?」を見出しに書いて、本文を埋めていくフォーマットです。 

外資系企業で学んだ「何が起こりますか?対象者は誰ですか?何をしなければなりませんか?」スタイルのアナウンスメール - give IT a try

結局の所、「伝えなければいけないこと」「間違って伝わってはいけないこと」などの思いはある一方で、「いろいろ言いすぎて伝わらない」ことに対してのケアができていないことがある。読み手は何を知りたいのか(何を知れば腑に落ちるのか)。

例えば、労基法改正の話をするのであれば、話を聞く方には「じゃあ、何時間を超えてしまうと法令違反になるのか」「何に気をつけるべきなのか」を理解してもらうことが必要だろう。しかし人事はご丁寧に「まず36協定とはなにか。これは労基法36条が…」みたいなところの解説をたっぷりしてしまう。間違った情報ではないが、今確実に伝えたい情報はそこではない。確実に伝えたい情報に入る前に、冗長となり、聞く側の意識が離れてしまう。 

人事は何かしらややこしい用語や、制度、ルールを取り扱うことが多い。私も、かつて人事として労務管理や給与計算を”される側”だった時は「なぜ勤務表を入力しなければならないのか。」「なぜ年末調整はこんなに難解な言葉が多いのか」と、興味以前の段階で後回しにすることが多くあった。それは、これらをやる必要性が十分に自分の中になかったからなのだと思う。

「勤務をちゃんと入力しろ」「この申請書を出せ」と頭ごなしに指示、命令をする管理部門の姿があるし、何度言っても改善しない社員は多くいる。それを本人の問題だ、だらしないからだと片付けるのは楽だが、要因はそれだけではない。「なんでやらなきゃいけないのか、本質的に伝わっていない(理解していない)」からだ。

 

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わかりやすいコミュニケーションじゃないと伝わらない

最近読んだ記事ではっとなった。北野唯我氏が、カゴメの寺田社長と話したエピソードを引用する。

僕は寺田さんに「なんでそんなにわかりやすいコミュニケーションをするんですか?」と聞いたんですよ。そしたら、「だって、わかりやすいコミュニケーションじゃないと、人事制度や制度は絶対に伝わらないし、意味がないからですよ」とおっしゃっていて。

だから、まさに寺田さんがおっしゃっていたのは、「新しいことをやるとか、それが利益をもたらすということをそのまま言うのではなくて、一人ひとりの個人にとって響く言葉で伝えないと、人の心は動かないよ」ということで、僕はすごく「そうだな」と思いましたね。

企業の業績を伸ばす要因は「風通しの良さ」だった データが裏づける“職場の空気”の影響力 - ログミーBiz

僕もすごく「そうだな」と思いました。この記事はぜひ読んでもらいたい。 

OPENNESS(オープネス) 職場の「空気」が結果を決める

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言う側は法や制度そのものを説明しがだが、聞く側が知りたいのは「それによってどうなるのか」「我々にどうしてほしいのか」であり、そこにズレが存在する。

説明をまるっと全部伝えようとするのではなく、誰に何をしてほしいのか。影響すること、求めることを明確にすることで、きちんと整理された情報になる。あとは、それがしっかりと響くように、届くようにする工夫が必要となる。

人事こそプレゼンの仕方を勉強する必要がある

社員が安心して働く、本業以外の変な憂いを持たずに本業に集中する環境を作る、そういったことが求められる人事部門が、難解な資料や複雑な指示、謎の依頼ばかりして足を引っ張ってはいけない。人事が伝えなければいけないことは多々あるが、その伝え方の工夫を怠ってはいないだろうか。

人事が長いスライドで淡々と説明をするのか、明るく社員の顔を見ながら説明をするのかということだけでも大きく変わる。スライドの色味や図説で、文章で伝わりにくそうな部分を工夫しているかどうかだけでも変わる。

読み手に「読み込ませる」「理解するための努力」を極力させず、すっと入ってくる資料作りをすることは難しい。営業の現場ではそういったことを考えて考え抜いてプレゼンしているのだろう。

しかし、社内に対しての提案、報告、説明資料を作る人事はそこまで工夫しているか?と言われると、どうだろう。社内だけではない。社外…採用の現場で、学生に対しての発表資料、「明らかに人事が作ったソレだな」と思うような、文字ばかりのパワポを見たことがあるだろう。会社概要や沿革をコピペしたページ、いるか?

必ずしも盛り盛りに飾り立てる必要があるわけではない。文字ばかりでも、すっと頭に入ってくるプレゼンだってある。

そこに必要なのは、伝えたい情報の整理と、それを読み手、聞き手にすっと理解してもらうための工夫と、思いやりなのだと思う。様々な情報を伝える必要がある人事だからこそ、伝え方の工夫が必要とされている。

私もまだまだ試行錯誤の最中ではあるが、元々「わからなかった」側の立場を経験している身として、わかりやすい発信の仕方を常に意識している。

 

↓定期的に読んでいる

tomoyukiarasuna.com

 

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