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成瀬あかりの物語は、みんなの物語だ。/『成瀬は都を駆け抜ける』感想

『成瀬は都を駆け抜ける』を読んだ。寒い日が続く今日、温かなあかりを灯しながら、成瀬が私の心を颯爽と駆け抜けていった。

ぬくぬくとした読後感が続くのは、成瀬の後に仲間たちも駆け抜けていったからだろう。真っすぐで眩しい成瀬あかりの姿に、多くの人が照らされ、導かれ、熱を帯びてズンズン歩いていく。やっぱ島崎!島崎ほんま島崎!!とニヤニヤして本を閉じる。

『成瀬』シリーズは読んでいて気持ちが良い。バシッと目立つ真っ直ぐな主人公がズンズン進んでいく物語を、様々な人物の視点から描き、その人物も巻き込まれ、成瀬あかりに照らされて、自分の道を進み始めていく様を見ていると清々しくなる。

とはいえ気持ちのいい場面ばかりではない。こんなはっきりとした意思を持ち、堂々として、びわ湖大津観光大使の衣装で入学生ガイダンスを聞いている成瀬は、「一般的に」見れば"変わった人"にあたるだろう。それを煙たがる人も、近寄らないようにする人も、インターネットの向こうで揶揄する人もいる。小学生の頃には担任の先生からも協調性がないと評されるエピソードがある。

いやしかし、どうだろう。成瀬は協調性がないのか?我が道をズンズン進んでいくのは確かではあるが、他者の道を妨げるわけでもなく、何なら他者が進む道を――たとえ理解できなかったとしても――尊重する姿勢がある。

こんな堂々と自分を持っているか?自信を持っているか?誰かに後ろ指を指されたとしても気にせずに、やりたいことを、夢中になれることを見つけられているだろうか?「……いいなぁ。」成瀬は、そんな読者の憧れのような存在なのかもしれない。あの時踏み出せなかった一歩を、貫き通せなかった意地を貫く、かっこいい主人公。

そんな成瀬を肯定し、成瀬に肯定された人たちを描いたのがこの物語だとも言える。特に本作の『そういう子なので』のエピソードは、今年親となった筆者にとってはグッと胸に刺さり、親目線エピソードにこうも感情が揺さぶられるものなのかと驚いた次第であった。成瀬が「信じた道をいき」、「天下をとりにいく」原点とも言えるエピソードがここで登場し、成瀬の芯を感じられたのだった。

それにしても…親目線の共感を得られるだけでなく、筆者が大好きな登美彦氏の話がこれでもかと登場し、京都(にある)大学に通っていた筆者と同様に京都の街を闊歩し、今年筆者がデビューしたことでもおなじみの献血をするエピソードまで登場し、果てには筆者がよく行く寺町商店街にある『ごえん茶』…の向かいにある鳩居堂まで登場する。これはまさに私のための物語ではなかろうか?

いや、琵琶湖の水がみんなのものであるように、成瀬シリーズはみんなのものだ。さあ、皆もぜひ成瀬の物語を楽しもう。そして、滋賀に行こう。レッツゴーミシガン!

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……あ、そうだ。おい西浦くん、文通のレターセットを買いに鳩居堂まで足を運んでいるのであれば、たまには向かいのお店ごあいさつ茶を買って同封しよう。あるいはchayoriを送ろうよ。

それにしても寂しいなぁ。シリーズはこれで完結のようだ。でも、いつかどこかでまた会える気がしている。成瀬あかり史は200年も300年も続くはずなので。もう一度…と言わず二度三度くらい顔を出してくれるでしょう。太陽のように輝く成瀬あかりの行く末は、注目しない方が難しい。

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