本のデザインをメインに紹介する本『ブックデザイン365』を読んだ。読んだというかパラパラと眺めた。
本のデザイン、あらすじ、制作者のコメントが掲載されているのが良い。知っている本の知られざるデザイン秘話にフムフムとし、ぜんぜん知らない本であればあらすじもひっくるめてフムフムできる。デザインだけで「読んでみたい!」と思わされる作品がいくつもある。
文芸書をはじめ、実用書やビジネス書、辞典まで……。書籍の内容を伝えながら、新しい表現に挑んだブックデザインを厳選!書籍の概要、制作者のコメントとともに用紙情報も収録し、思わず手に取ってしまうブックデザインの魅力に迫ります。
ブックデザイン365
デザイン、タイトル、あらすじだけで興味を持った本を何冊かピックアップして後日読むことにした。紹介文込みで吟味ができるので、書店でのジャケ買いとはまたちょっと違う趣があった。
今日はその中の一冊『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』を読んだ。
「おい鈴木、米原正和を捜しに行くぞ」とその米原正和が言った──。失踪した米原正和の行方を、当の米原とともに追う鈴木。会社を休んで、米原の自宅、立ち寄り先を米原をともに捜す。果たして、米原は見つかるのか?
失踪した男の行方を、当の男本人が追う──。
読むものを混乱と肩すかしに陥れるカルト作家の真骨頂。古栗ワールド全開の小説集。
金を払うから素手で殴らせてくれないか?
表題作『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』他『IT業界 心の闇』『Tシャツ』の三篇が収録された短編集。あらすじを読んだところで大変ヤバそうな雰囲気が出ているし、いざ目次を開いたらより不穏な空気に包まれた。なんだ『IT業界 心の闇』って。
全編でたらめな文章がノンストップで押し寄せてくる体験ができる。なんだったんだろうこれは。熱がある日に見る悪夢のような文章を浴び続け、時に「どうしてそうなるんだよ」とゲラゲラと笑っていたら、時折めちゃくちゃ下品な場面が超特急で眼の前を横切っていく。「物語」として真っ当に読もうとすると知恵熱が出てしまうので、心を楽にして「現象」として浴びるほうがいいのではないかと思う。ただし浴び続けると熱が出るかもしれない。どないやねん。「読むものを混乱と肩すかしに陥れる」とはよく言ったものだ。どうしたらこんな話が書けるんだ。
『IT業界 心の闇』はバカバカしい展開に「なんでそうなるんだよ」と言ってたら想像もしていなかった展開にハンドルが切られて崖から落ちてしまった。「なんでやねーん」という悲鳴が虚しく響いた。
『Tシャツ』は『意味不明すぎてバズるミュージックビデオ』の映像を息つく間もなく浴び続けるような体験をした。途中で間延びもした。ただ終盤作者がすっごく楽しそうだった。なんでそんな結末になるんだよ。どうなってんだよ。
『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』はコントだった。コントじゃねえか。誰ひとりまともな人間がいないコントはこんなにも恐ろしいのかと思った。
なんというか、この本を読んでよかった!とか、誰かにおすすめしたいかとかよりも、この本にたどり着くまでのプロセスも引っくるめてなかなか新鮮な体験をしたので記事に残すことにした。
自分が本屋に行くだけでは出会うことはなかったであろう、たまたまの出会いで本を読むっていう体験はいいですよね、という話。
次はこちらを読む予定。
~余談~
この記事を書くにあたって、初めて本書のことを検索したらデイリーポータルの記事に出会った。自分の感想をアウトプットした後で記事を拝読する。
『読む麻薬』『ずっと踊ってるインド映画』に大いに納得。そもそもTwitter文学賞を受賞してたのね。当時バズってたのかな。見逃してたのか記憶から消えていたのか。


