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#cybozudays 2019大阪 基調講演レポート(2019.12.6)

昨年に引き続きサイボウズデイズに参加してきました。今回は都合により基調講演と午後からの1セッションのみ参加。来年こそはまるっと一日参加したいものです…。

 

今年のテーマは「モンスターへの挑戦状」

ここで言うモンスターとはカタチのないもの、思い込み。~~あるべき、~~でないといけない。そういったモンスターに囚われたカイシャや上司、同僚、あるいは自分。

そういったものとどう戦っていけばいいのか。そのヒントを探っていく冒険が始まります。

 

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また楽しそうなビジュアルを作ってきますよね。昨年はサーカスとかパレードの感じでしたけど、今年はRPG感です。

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各ブースの名前もおもしろいことになっています。この資料見せたら「遊びに行ってきたの?」ってなりそう。まぁ楽しいから間違っていないかもしれない。セミナーが楽しいものならそれに越したことはないでしょう。

 

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基調講演

青野社長挨拶
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モンスターは、実態のない思い込み。

男らしく、女らしくとか。いい大学、いいカイシャとか。こうあるべき…みたいな思い込みというモンスターに支配されてしまっている。

 昨年出版された本、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』でカイシャをモンスターとして表現したところから、今回のテーマに発展しているようです。

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。

  • 作者:青野 慶久
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2018/02/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 カイシャというものも実態がない。会社は法人であり、法の下に人として取り扱われているだけである。

  • 会社の方針なら……いやいや、それは経営者の方針ではないか?
  • 会社のために……いやいや、お客様のためなんじゃないの?
  • 会社に迷惑を……いやいや、上司や同僚にじゃない?
  • 会社はわかってない……それも上司や同僚といった周りの人でしょう?

"カイシャ"というよくわからないモンスターじゃなくて、人と話そう。

 こうして、基調講演が開始しました。

株式会社PHP研究所 PHP新書副編集長 大岩 央さん

前述の書籍を担当された大岩さんとの対談。短い時間ながら濃厚なセッションで、ほぼほぼタイプし続けていたので、ざざっとメモを載せておきます。

■この本を担当するにあたって

いい会社の定義を見直したくなった。売上が大きいからいい会社というわけではない。
カイシャという実態はない。方針は誰が決めたのか、誰に言えばいいのか。その人に届く言葉で戦えばよい。

PHPの現場では

PHPも人手不足の波によって働き方が変わりつつある。シェアオフィスや共有ツールができた。かたや、「会社は楽しくなくて当たり前」と思っている人(世代?)もいる。そのため、自分の要望が「個人のわがまま」だととらえられてしまう。我慢が当たり前の文化。

一つ発見につながる話がある。妊娠時に社内の空気に不満をもっていたが、内側に秘めていた。復帰していろいろ大変なことを話しているうちに、実は同じ思いを持っている人、共感してくれる人が上の世代でも、男性の中にもいることがわかった。公私混同なんてしてはいけないと思っていたが、オープンにすることで伝わることがある。共感を生むことがある。

■担当した他の書籍紹介

橋下徹さんの「実行力」
この中で触れられているエピソードが大阪城公園でのモトクロス大会。大阪城公園内は遺構も多く、ここで民間のイベントをやるのはもってのほかだったが、その考え方を変えた。部下の思い込み、固定観念を壊すためには、まず大きく壊すような行動が必要で、それがリーダーの役割。

サイボウズが取り組んできた働き方改革の背景

かつてはブラックなITベンチャーで、離職率20%超。これではいかん、残ってくれている人がいかに長く働き続けられるかを考えた。一人ひとりの考えを聞くようにした。

例えば、とても優秀だけど、どうしても朝が苦手で遅刻ばかりする社員がいる。従来のルールでは「朝の遅刻」が評価に響くようになっているため、どれだけ優秀でも給料があげられなかった。社内でも多様な働き方が増えてきた中で、遅刻を評価基準に入れる必要があるか?となりその評価基準が撤廃された。

働き方改革は、ともすれば女性や子育て世代を優遇しているように見えてしまいがち。"朝起きれない"とか、個人の生き方や属性、価値観がもっと多様なはずなのに"こうあるべき"としてきたものを”そうではないのでは?"と100人100通りの制度を取り入れたことが素晴らしい。(大岩さん)

サイボウズの「質問責任」

サイボウズ内の義務の一つ。「疑問に思っているなら聞け。質問もせずに陰で愚痴るのは卑怯だ」という考えのもと定められている。
しかし、質問しろといってもすぐには浸透しない。質問しても「何言ってんだ」と突き返されたら今後質問しづらくなる。"心理的安全性"がなければ成り立たない。質問してもいいんだという風土を作ることが必要。

そのためには、ファーストペンギンを拾ってあげることが大事。みんなが言いづらいところでパっと質問をしてくれる、一人目の勇者をしっかりと拾ってあげる。

過去に3年目社員が臆せず「今のボーナスの制度はおかしいと思う。こうしたほうが良い」と意見をした。それを経営陣が受け止め、議論し、結果的に制度が変わった。この組織では「言ってもいいんだ」という空気が広がり、質問責任の浸透につながった。ここでは、決定していくプロセスをオープンにすることが大事。結果がどうあれ納得感が変わってくる。密室の会議でもみ消されたりされない、言ったことがしっかり議論されているとわかる。

■最後に:下から目線でモンスターと戦うために大事だと思うこと

・力をつける
実力をつける。会社に役立つ人物にならないと話は聞いてもらえないと思う。

・言葉にする
世界を変えるのは「言葉」であると思っている。
今までは「性的なからかい」とされていた→セクハラという言葉ができてから問題提起できるようになったように、言葉が考え方や社会を変えていく。

・仲間をつくる
言葉にしていくと、共感してくれる人が集まってくる。発信することで仲間をつくることが大事。


大岩さんとの対談では、青野さんの著作やサイボウズの制度にも触れながらのお話になりました。大岩さんが大事にされているんだな、と思ったのはやはり『言葉』。概念を言語化することもそうですし、言葉というカタチにして発信することで、そのカタチについて反応してくれる人がいる。気づいてくれる人がいる。逆に言えば、言葉にして伝えないとわかってもらえない。

言葉に対して様々な反応を受けているであろう出版社の方だからこその気付きでもあるし、それを大事にされているということがよく伝わりました。個人的にも、今社内で違和感を感じたら積極的に声をあげたり、良いなと思ったネットの記事や書籍についてを共有するようにしていて、そこから得られる共感でじわじわ周囲が動いているのを実感しているところだったので、とても響きました。

 

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 お笑いジャーナリスト/株式会社笑下村塾 取締役 たかまつななさん

サイボウズデイズの登壇者の中では珍しいジャンル。子どもや若者に政治に関心を持ってもらいたいと思って様々な活動をしているお笑い芸人さん…?と言って良いのか。青野さんが選択的夫婦別姓で国や司法と戦い始めて政治の世界に触れられていることから、このオファーになったんかなぁと思ったり。

学校で講演などもされるたかまつさんが思うに、学生たちは校則すらも自分たちで変えられるものだと思っていない。自分たちで発案して変えていく経験がないので、選挙に行ったり変えようという意識が生まれづらい。例えば"徴兵制度を導入する"という極端なことがないと、若者は動かないのかもしれないが、そうなったときにはもう世の中を変えられなくなっているかもしれない。

青野さんも、選択的夫婦別姓の訴訟の原告代表になったことで初めて司法の仕組みなどを体験している。こんなでかい話じゃなくても、何かを決める、何か案をだして、仕組みを変えていくという経験を経ることで、そのことへの興味関心が更に深まるんだなぁと。

事務所に属していたこともあるたかまつさんに、吉本の騒動…モンスター的騒動の話を伺う青野さん。闇営業の話や反社の話がごっちゃごちゃになってしまったが、反社の方々は巧妙な手口で潜り込んでいるため、それをどう防ぐかという議論にすべきだったと持論を展開します。闇営業単体については、事務所とタレントの話なのに外部が騒ぎ立てなくても…と思いつつ、あんなに給料問題等騒がれているのに労組の一つも作らず事務所の言いなりになっているタレントもどうかと思うよ、と辛口(笑)一部では法人を立ち上げて事務所とやり取りするタレントもいますけどね。と青野さん。

また、芸人がいかにサラリーマン気質か、という持論も展開。舞台に出て、賞レースに出て、テレビに出て、ひな壇飾ってレギュラーもって、MCになって…というガチガチな出世コースと、上下関係の厳しさ。普通の会社員と飲み会するほうが気楽、というほどに、芸人の一部界隈ではガッチガチの上下関係が残っているようでした。事務所に言われるまま、出世コースに乗せられるまま、「やりたいこと」が出来ている人って意外に少ないのかも。

 

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株式会社minitts 代表取締役 中村 朱美さん

佰食屋の人だ!!!と歓喜のワタシ。「売上を、減らそう」ですよ。

この本役員の部屋に置いといたらどんなこと言うんでしょうね。うひひ。

売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放(ライツ社)

売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放(ライツ社)

  • 作者:中村朱美(佰食屋)
  • 出版社/メーカー: ライツ社
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 単行本
 

 サイボウズ式でも登場されていたので、接点はあるんやなーと思ってたらサイボウズデイズ登壇で嬉しかったです。やったぜ。

佰食屋の話は割と様々なメディアで取り上げられているのでご存じの方も多いかと思います。1日百食限定のランチ営業。売り切ったら営業終了。閉店後、社員も遅くても18時には帰っている。今では毎日朝9時半の整理券時点で完売し、4店舗も展開されている。もっともっと時間を伸ばせば売上も増えるのに、そうしない。そんな中村さんのお話です。

私はこの方の話を最初に読んだのがこちらでした。

これに加え、先程のサイボウズ式の記事でも拝読していたので、中村さんのおっしゃることはだいたい再確認になるかもなぁ、でも直接聞けるのは嬉しいなぁと思っていたのですが、新たな発見がボロボロありました。というか、書籍まだ読んでなかったわ。買おう。

 

■売上を、減らそう。

バブル経済の後、停滞期になっても企業はずっと右肩上がりを求めているが、その思いの被害は従業員にいっているのではないか?前年対比110%を続けるなんて、時代の流れを考えると不可能に近いんじゃないかとすら思っている。いっそ売上は減っても良いから増益にしないか?というシフトチェンジができたらいいと思う。」

\そうだそうだ!!何でもかんでも昨対比110%とかちゃんと考えてんのか!

おっと心の声が漏れてしまいました。失礼しました。売上が減ると叩かれたり、ダメなことだと言われがちだが、売上が減っても従業員が幸せになれて、会社にも利益が残せるようなスタンスを示すことができれば、そしてそれを世の企業が真似してくれたらいい、とおっしゃっていました。素晴らしい。

とはいえステーキ丼1個1000円で1日100食。まぁまぁ大変です。しかも原価率50%。それでも利益は残せているそう。「会社が継続可能な利益」という目標数値にしているからこそできるんですね。拡大拡大の路線ではないからこそ。広告宣伝費もかけずに、それを原価率に乗せている。広告宣伝をお客様に委ねるべく、商品開発や質にこだわり、マーケティングにこだわっている。口コミの味方である女性を徹底的にターゲットにして、什器から内装から立地まで考えている戦略があります。

 

 ■希少価値に重点を置く

3時にお店を締めたらテナント料もったいないんじゃない?と青野さん。夜は別業態、あるいは貸し出してもいいんじゃないかと思います。中小企業診断士はじめ様々な方からも同じことを言われたそうですが、「お昼にしか食べられない希少価値」というブランディングをされているようです。「夜にお店の電気が消えている」こともその価値を担っているという。ひえ~っ、やるからにはトコトンだ!たとえ誤解だとしても、夜にお店がついてるのを見たお客様が「なんだ夜でも食べられるのか」と思ってしまうことを避ける考えがありました。

また、夜の時間帯を主戦場とするお店とも棲み分けができているので、業界内で競合せずにすんでいるそう。

 

■採用はハローワークのみ

まず、紹介手数料がかからない点。人材紹介会社を経由すると、その人の年収の3割だかを人材紹介会社に持っていかれる。それは本人に還元されるわけではない。それなら、そのコストをちゃんと本人に還元したい。

また、ハローワークには、就職が難しい人…シングルマザーや障害者、高齢者、妊娠中の方、正社員として働いたことが無い方が多くいる。そういった、働きづらさを感じている方々と一緒に働くメリットがたくさんあるそうです。同僚として日々目の辺りにしていると、その方々をサポートすることが当たり前になってきて、いざお客様に似たような状況の方が来た場合、自然とサポートができる。例えば、高齢のスタッフと日々働いていると、「こういったことがしんどいんだな」というのがわかる。だからこそ、高齢のお客様が来た時に必要なサポートが自然とできる。これは副産物だとおっしゃっていましたが、そういった経験が積み重なっていき、多様な方々が同じ職場にいることが、社員教育にもつながっているそうです。

近年ダイバーシティや多様な人材の活用と言った言葉が取り上げられているが、それを目的にするとマニュアルに沿った対応、型にはまった対応になりがち。ちょっと違うことがあるとフォローできないようになってしまう。そうではなく、日々自然と接することによって当たり前にサポートができるようになってくる。ルールがないからこそ、自分が何ができるのかを考えて対応してくれる。

外国のお客様が来たときは、それに対応しようと外国語を学んだ従業員がいた。それを喜んだお客様が口コミで広げてくれて、さらに多くの外国のお客様が来て、それで更に従業員は外国語を学び…のループが起きて、インバウンドも好調になった。なんてそれすごいなぁ。

この話にはもう一つ重要な要素があります。それは、従業員が接客に集中できる環境を作っているということ。お店の宣伝や口コミ、採用のような業務は完全に経営者である中村さんが担う。現場の人には、現場のことに集中してもらう。いかに接客するかに集中する余裕があるからこそ、こういった対応ができるんだろうなと思いました。

 

■従業員の自己決定権

佰食屋では"勤務時間" "休日"を従業員が決められるようにしています。勤務時間は始終業時間をいくつかの選択肢の中から決める(=基本給を決める)、しかも随時変更可能。休日だって年次有給休暇はもちろん、それ以外の休暇も申告すれば取得できる。

そのため、必要人数以上に採用をしているのと、休みをとっても大丈夫なような業務量にしている。その分お金はかかるけど、採用経費がかからない分、従業員に還元している。会社が自分のために投資してくれていると実感できる。

これ凄いですよね。自分が働きやすい環境を会社が作ってくれていることが、ありありと実感できる。自分が休みもなく残業もして売上をひーこら立てているけど、それを自分のために使ってもらえてる実感なんて、あんまないじゃないですか。

休みが重なったりして人手が足りないときは、100食ではなく80食にする=売上を減らす。という選択をする!っていうのもすごい。佰食屋は5人で100食=1人20食の業務量にしていて、1人欠けても業務量を変えない選択をされています。すごい。だからこそみんな気兼ねなく休めるようになってる。売上のために負荷を増やすことをしない。こんな選択できます??

4店舗目は50食限定のお店で、2人で回しています。たまたま1人欠けてしまった時、1人25食ワンオペになったとき、お客様が手伝ってくれたなんてエピソードも。"佰食屋"というやり方、目標をお客様にも共有しているから、共感されるビジネスにもなりつつあるようです。

■売上が下がっても利益は下がらない

従業員の満足、売上のために負荷をかけないということをした結果、それでも意外と利益は残りまっせという結果を残した佰食屋。

売上を減らす決断を取れることで、従業員の満足、生産性の向上、そしてお客様の共感や応援があって、利益は意外と減らない。という新発見を、どんどん発信していきたい。モデルケースを作っていきたいとおっしゃっていました。

今後の展望は、職業的地位が低く見られがちな飲食業をもっと楽しい職業だと思ってもらえるようにしたいとか。2分の1の50食ベースの店舗での小回りを元に、なんなら1オペでもできるモデルケース、1オペでも楽しくやれる自分の城みたいなケースを作っていきたいということでした。既成概念に囚われない働き方の飲食店、今後ますます注目やな~。というか、まずは一度食べに行きたいわぁ。


 

次のセッションの話も書こうと思ったのですが、基調講演だけでまぁまぁの量になったので分けて書こうと思います。

次の記事では、『パナソニック人事がサイボウズと組む理由 〜これからの人事に必要なものとは〜』というセッションのレポートと、その他会場を回っての話を報告します。

dego98.hatenablog.com

 

 

 

↓昨年のサイボウズデイズの記事はこちら

dego98.hatenablog.com