DegoReco

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(残念な)人事は「俺達の考える最高の制度」を作って満足しがち説。

今回も仕事の話。

結論から言えば、「制度を作る」ことに必死すぎないか?「現場できちんと運用できるようにする」ことがあまりにも軽視されていないか?失敗するぞ?という話。

そして、うまく運用させるには、「はいできました、これね!」って進め方はこれからの時代はダメでしょうという話。

 

3社経験してきて、制度設計に携わったことはそれほど多くはないが、制度を作り、それを役員に説明し、社員に説明し、運用し…の流れは何度か経験してきた。

人事制度を変える、というのは会社にとってはなかなか大きな話で、そんなしょっちゅう変えるわけではないだろうけど、まだキャリアと積み上げる段階で3社分目の当たりにしてきたのは幸甚だったように思う。がっつり関わるポジションや部署でなかったのが、今思うと悔やまれるし、口出ししていけばよかったとも思う。

「人事の制度はわかりにくい」「人事は現場をわかっていない」などなど、そういったことが現場からあがることもままあるのはなにか。一所懸命考えて考えて、それなりの時間と、例えばコンサルへのフィー的にお金も懸けて考えた制度なのに、なぜ成果を発揮できないのか。今までの悪い例から紐解いていきたい。

 

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俺たちは説明した。あとはわかってない現場が悪い理論 。

評価制度。例えば「目標管理制度(MBO)」が運用されている場合。私は今の所この制度ばかり経験しているので、OKRについては概念しか知らない。

期初のタイミングで「目標」について設定をし、半期や期末においてその成果をすり合わせ、評価を行う制度。一方的なノルマではなく、自律的に目標を立て、マネージャーとすり合わせ、実行に移していくことが求められる、その達成度で評価を行う。

 この制度のキモは以下のようなものだと考えている。

  • 各自が目標を立てられるよう前提として組織としてのミッションが明確に共有されている。
  • マネージャーは部下たちの目標が本人たちへの期待度等と合うか基準を正せる。
  • 目標への進捗について、中間ですり合わせも行える。
  • 達成できた/できていないの水準が双方納得行くカタチで説明できる。

こういったことがちゃんと運用されれば、本人も、マネージャーも腹落ちするような動きになるはずである。

はずなのである。

まずいのは、この制度を人事と経営層だけで設計したりしてるパターン。実際運用するマネジメント層も絡めて議論されているかどうか。また、実際に「目標を立てる」側の社員たちも巻き込めているのかどうか。

 

しかし、それができていない場合、人事たちはこういう思考のもとで制度浸透を図る。

「全社員説明会をして、資料を配ればある程度理解してもらえる」

「特に重要なのは管理職なので、管理職には別途評価社向け研修をやろう」

「それから、管理職から部下へきっちり伝えてもらえば、部下たちが目標を立てられるようにしてくれる」

「それができない場合は、ちゃんと制度を運用してくれない管理職や現場が悪い」

 

この図式をイヤとなるほど見てきた。人事はコンサルと議論を重ね、経営層との壁打ちを繰り返し、きっちりと制度を完成させた。一番理解しているのは人事だ。経営層も、何度の壁打ちを経て理解をしているのだ。

そんな制度が、ただ1度の説明会、マネジメント研修で社員に行き渡るかといえば、そんなことは幻想に過ぎない。

dego98.hatenablog.com

 

この記事でも述べたが、そもそも人事が主催する説明会や説明資料は、「0から聞いた現場の人がわかりやすいもの」である可能性が低い

…私も偉そうなことが言えるほどではないが、前任が過去に使っていた資料を読み漁って頭を抱えることが多くあり、こうしてはいけないと肝に銘じながら資料作成、説明会運営を行うようにしている。

「俺達は説明した、あとはわからないのが悪い。質問しないのが悪い」と、制度をきちんと作り上げ、理解しきっている立場でいる人事は評価されるべきではない。

こういった制度は、運用フェーズにきちんと落とし込んでこそ成功であり、評価されるべきなのだ。「新人事制度を作りました!!!!」が評価されてしまう体制だと勘違いが起きてしまう。

ここには、「人事は当たり前のことをやる部門だから評価されづらい。何か新しい取り組みをしないと評価できない」という価値観がバックにあるかもしれない。何か作ったもん勝ちだ。後のことは知ったこっちゃない…とまでは思ってないことを願うが。これは、そもそもの評価のあり方、「成果」の定義に問題があるのかもしれない。

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制度をうまく浸透させるには

これはもう小難しいテクニック論ではなく、端的にどう理解させるか。「腹落ちさせるか」に尽きるだろう。

  • なぜ制度を変えるのか?作るのか?
  • どう運用するのか?そのために何が必要で、自分は何をすればよいのか?
  • その目的はなんだ?

これは自分たちに関することであり、こういった目的に基づくものだということを理解してもらう必要がある。

人事に限らず本社系あるあるだが、「こう決まったので、みなさんこうしてくださーい」みたいな、お上からの指示的に物事を進めてしまうことが多い。まぁビルの清掃が入りまーす、とかネットワークメンテが入りまーす、みたいなお上からの連絡は良いとして、「制度を変えまーす」、とか、「こういうルールにしまーす」な連絡が一方通行すぎてはいけない。

旧来の組織体制、…社長から部長、部長から部下…といった情報や指示を落としていって情報を落とし、社員はそれに従っておけばいい…ような組織を作りたいのならそれでよいとは思う。

 

一方で、最近では「社員の自律」を促すような会社も多いだろう。自律を促しておきながら、情報が管理職層で止まるとか、透明性がないとか、ちゃんちゃらおかしな話だろう。

情報をオープンにし、メンバーそれぞれが自律して動けなければ、組織として時代の変化に対応できなくなると思います。

「在宅勤務でメンバーの動きが見えない」は、リモートワークをいいわけにしているだけです──キャスター石倉秀明×Goodpatch Anywhere齋藤恵太 | サイボウズ式

 

一番大事なのは「情報の公開」だと思います。権限を持っている人が情報を渡すのって、勇気がいるんですよね。なぜなら、財務状況とか事業戦略は、出してしまった瞬間にウソをつけなくなるから。

でも、開示してみんなが知ることで、一人ひとりが主体的になれる。みんなに「自分の会社だ」と思わせるためには、情報の公開が必須だと思うんです。

情報をクローズにする経営者は、凡人以上に天才を殺している──『天才を殺す凡人』北野唯我×サイボウズ副社長 山田理 | サイボウズ式

 「制度を変える」といったことは、なぜかトップシークレットとして検討を進めることが多いのではないだろうか?(特に給与体系など)シークレットに進めなければならない、といった思い込みがあるのかもしれない。あるいは、何かやましいことがあるのか。

決まったことを「はい、こうなりました!」では自律意識を芽生えさせるための施策とは真逆を行く。目標管理制度はそこが一番重要だろう。

プロセスの開示、時には設計時に社員を巻き込んでいくことが重要なのだろうと思っている。社員の意見を全部反映させろということではない。目的があって制度を変えようとしているのだから、社員からの疑問や意見とぶつかりながら、「目的」を浸透させる努力が必要になる。あまりにも乖離があるなら目的からやり直すのも一つだろう。

意見を反映しきれなくても、こうした議論を経て出来上がったカタチなのだとなれば、少なくとも「ただ反発する社員」「理解しない社員」は生まれないだろう。

 …というのことを、先に上げたキャスターの石倉さんの話、サイボウズの青野社長や山田さんの話を経て、再認識したのでした。人事の偉い人たちにも前の記事や最軽量のマネジメントの感想文を出しつつ、「ほんま情報クローズすぎやしませんかね」といろいろ提言しているところです。反応は…まぁ…。