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大好きな小説が大好きな映画になった幸せ/映画「ペンギン・ハイウェイ」感想

子どものころ、夢中になって何かを追いかけたことがあったろうか。

学生のころ、これだけは、とのめり込んだ何かがあったろうか。

今、誰かに言われてやるのではなく、自分の意志で、何かを成し遂げようとしていることはあるだろうか。

 

周りで"そう"だった人のことはよく思い出せるし、印象に残っている。

応援したくなるし、「凄い人が身近にいるんだぞ」と自慢もしたくなる。

何かに夢中になり、真剣になり、追求をする。その行動は尊く、周囲の協力を集める力を持っているように思う。

今までそんなことがあったか。なかったとしても、その尊さを知った今、これから成し遂げることができるかもしれない。

 

ペンギン・ハイウェイはそういったことを思わせてくれる作品であると感じている。アオヤマくんは努力を怠らず、昨日の自分に負けないように日々成長し、好奇心を胸にとことん邁進していく。慢心はせず、妹やクラスメイトの言動についても下に見ず、"自分とは異なること"の一つとして疑問を持ち、また自分の研究の糧にする。

 

そんな彼のひと夏の経験を描いた作品「ペンギン・ハイウェイ」が映画化し、8月17日に公開された。

 

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映画『ペンギン・ハイウェイ』 予告2

 

(この記事は、原作が大好きな私の立場で見た感想となります。話の核心に迫るネタバレに差し掛かるあたりで注意書きを挟むようにします)

 

【結論】

原作がめちゃめちゃ好きな自分が、めちゃめちゃ好きな映画である。

 

 原作を読んだ私は、これを映像化してほしいと思った。街に起こった謎に対する、子どもたちの冒険譚と、取り巻く大人たちの関わり方(見守り方)、次々起こる不思議な現象が妄想力を刺激するところ。何をとっても素晴らしい作品であるが、これを一気通貫で映像化してくれたら、それはそれは素敵な作品になるだろう。しかしそれは非常に難しいだろうとも同時に思った。

スタジオジブリであればこの雰囲気を表現できるのではないかとも思った。しかし、おっぱいおっぱい言っている魅力が、ジブリではなにかに置き換えられてしまうのではないかとも思った。

 

そう思い、私は映像化については難しいものだと結論づけていた。それでも構わなかった。ファンタジー、かつSFゴリゴリの原作はこれでもかと脳内を刺激し、魅力的な世界を私に体験させてくれる。

 

しかしこの度映像化する運びとなった。脚本は信頼を置く上田誠さん。スタジオコロリドについては存じ上げなかったが、特報の映像を見て安心した。いや、期待した。これは素晴らしい作品になる。


映画『ペンギン・ハイウェイ』 特報

 

事実、素晴らしい作品だった。

原作ファンのため、どうしても原作のシーンを思い返しながらの映画鑑賞となってしまったが、「え、これめちゃめちゃおもしろい話だな…」と衝撃を受けてしまった。そもそも原作がおもしろいのだが、映画にしてそのおもしろさを損なわず、むしろ映像という別の魅力を纏いながらおもしろい作品に仕上げられている。

街で起きた不可解な出来事に対して、アオヤマ少年が仮説検証を繰り返しながら、別の問題とも結びつけながら立ち向かっていきつつも、謎がより一層深まったり、糸口が見つかったり…一体これはどういうことなのか、とワクワクさせるものがある。

 

主演の北香那さんの演技は素晴らしかった。アオヤマくんという聡明でありながらやはり子どもらしいかわいい一面がある少年を見事に演じていた。

ウチダくんを演じる釘宮さんはくぎゅくぎゅうしていつつ、ウチダくんのキャラクターにぴったりであり、潘めぐみさんはハマモトさんの好奇心旺盛おちゃめ性質&気の強いしっかりした少女感にハマっていた。

アオヤマパパの西島さんも、穏やかで頭のいい、やさしいパパとして申し分ないし、ハマモトパパの竹中さんは、その飄々とした普段の姿とは異なる、ずんぐりむっくり研究者パパとして違和感がなかった。

 

そして何よりも蒼井優さんの「お姉さん」だ。

まったく別の作品で、この年齢のお姉さんを演じた声であるならば、確かにちょっとハスキーさが気になる演技に感じるかもしれない。

しかし「この作品においてのお姉さん」においては、蒼井優さんのお姉さんっぷりは完璧としか言いようがない。俺はこのお姉さんに会いたい。お近づきになりたい。子どものころに会っていたらどうなっていたかわからない。

 

どうしても広告宣伝の仕方的にペンギンに注目が行き過ぎている気がするが、この映画は "ペンギン、カワイイー!!"というだけの映画ではない。いささか広告宣伝の仕方に若干の疑問はあるのだが(コウペンちゃんとのコラボとか、この作品をカワイイ路線で売ろうとしているのか?と疑念にすら思う。「引きつける」ためには仕方ないターゲット選定かもしれないが、作品がずばり刺さる層はそこではないのではないか) 

あ、いや、もちろんペンギンは可愛い。序盤のペンギン大行列のシーンなんて最高に可愛かった。しかし、可愛いペンギンがキウキウキシキシ言うだけの映画ではないのだ。や、でももちろんペンギンはとてもかわいい。スズキくんをペチペチするところや、お姉さんの指示ですいーと泳ぐところなんて最高に可愛い。

 

ペンギンの謎、お姉さんのおっぱい、少年たちの冒険と観測、それを見守り、協力するオトナ。徐々に複雑になる謎。お姉さんのおっぱい、さらに街に起こる不思議な現象、お姉さんの謎、少年たち同士のケンカ等々、「研究」に対する姿勢、お姉さんのおっぱい、そして解ける謎と、目の前に迫る危機、そして―――――――。

 

見終えてすぐにパンフレットを買った。正直これはマストバイの一冊。劇中に出てくるアオヤマくんのノートがしっかりと掲載されている。映像では読み切れない細部まで読み解くことができる。おっぱい周りのアオヤマくんの考察が最高におもしろい。「おっぱいはお椀では再現できない」

 

子どもをターゲットとしているのであれば、それこそ夏休みのはじまりの頃に公開してくれていたら…と思わなくもない。謎に対する取組み方や、研究のおもしろさを余すことなく説いているからだ。夏休みが終わりに近づく今、少年少女がこの作品に触れると、夏休みが終わってしまう切なさと、「こんな夏休みが過ごしたかった」という思いが交錯してしまうかもしれない。

 

時間の都合上映画では描かれなかったシーンが原作にはある。森見登美彦氏もパンフレット内で言及しているが、ウチダくんの独自研究、仮説についてはぜひ読んでみてほしい。彼はオドオドしているだけの子ではない。

 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

 

 

 

==========以下、ネタバレを含んだ感想です==========

 

 

あああー!!原作好きな人と語り合いたいー!!!!!!

あのシーンよかったよね!とか、お姉さん最高すぎませんか!?などと言い合いたいー!!!「でもやっぱりあのシーンも映像化してほしくない!?」などジタバタしたいー!!!!!!!

 

・お父さんと僕の最後のシーンが見たかった!!

終わったときに一番に思ったのがこれ!!

最後の最後、少年のモノローグは最高に好きで、それだけで泣いてしまうのだけど、いざ映画では、お父さんとの最後の会話がなかったことに動揺してしまった。俺はお父さんの「知っていたとも」が聞きたかったぁー!! そもそもお父さんとのやり取りが若干少なかったんだよなぁ。それにしても、やはり海外出張から帰ってきたお父さんが、この出来事を終えたアオヤマくんと話すシーンは入れてほしかった。お父さんに対してアオヤマくんが最後にいう言葉こそ、胸をぎゅーーーーーーっと締め付ける言葉であり、最後の最後のモノローグをより色濃くするものだと思っています。

 

・「一生ゆるさないから!!!」のアツさ

原作でも大好きなシーンが、ハマモトさんがスズキくんをひっぱたくシーン。今まで独自で研究していたことを、スズキくんがかっさらっていったことに対して激昂するシーン。今までの積み重ねがあったから、ハマモトさんが真剣に研究してきたからこそ爆発する怒りを表したシーンは、小説でも感情が伝わってきたし、映画でもそれがしっっかり描かれていて、最高でした。ああいった感情の起伏を丁寧にかけるのはすごいことだと思う。

 

蒼井優!!

お姉さん!蒼井優!お姉さん!!最高!!

蒼井優の「おっぱいを見ていたな?」が聞けるのはこの映画だけ!!!

 

・お姉さん!!

お姉さんの描写が全体的に気合入りまくりで最高でした。そうだよ、そういうことだよ。登美彦氏が描いたお姉さんのイメージを、全力全身で描こうとしているこの映画は最高だ。自宅でのシーンのドキドキ感、少年を通じて見るお姉さん、最高としか言いようがない。これを見に行った少年たちがなにかに目覚めてしまうのではないかと思うよ。

お姉さんの本棚に美女と竹林が置いてあることに、登美彦氏ファンはフフっとしてしまう。

 

・だからこそ泣く

お姉さんが完璧すぎるし、アオヤマくんも最後の方の、謎を解いた!けど、けど…の切ない演技がすごすぎる。小説を読んで抱いた感情が、そっくりそのまま映画からも受け止められて、もう駄目でした。自分ひとりで見ていたら嗚咽してる。

 

・そういや「ぐんない」言ってないよね

宇多田ヒカルさんの主題歌が Good Nightで、原作でもアオヤマくんが「ぐんない」をおやすみなさいと知り、お姉さんに披露したがる、なんてところがあるのだけれど、作中では出てきませんでしたね。ぐんないが出てきたら、エンディングテーマも更にぐっとくるんだけどなぁーとは思ってました。パンフレットに載っているアオヤマくんのノートを見ると、ちゃんと「ぐんない」に関する記述はあるのだけれど、そこのシーンは欲しかったなぁ。

 

・断食実験の最後は、おとうさんにいてほしかった

映画は映画でよかった。でも、実験に対して、お父さんが「どうだった?」と言ってくれるまでの一連の流れが大好き。断食の実験の後、お父さんがご飯を作ってくれて、アオヤマくんがおいしさのあまり涙してしまう。原作のあの暖かさが好き。(映画では母の暖かさとして出てきてくれて、それはそれでいいのだけれど)

 

 

あー。本当に素晴らしい映画でした。原作を読み返して、もう一度見に行って…。何度でも何度でも会いたい。アオヤマくんはお姉さんに会いたいと思う。私は、アオヤマくんにも会いたいよ。

 

 

ペンギン・ハイウェイ 完全設定資料集

ペンギン・ハイウェイ 完全設定資料集

 

 完全設定資料集には、アオヤマくんの数年前のお話「郵便少年」が掲載されているので、買うしかありませんよ、そこのあなた。

郵便少年は過去、入浴剤と短編小説がコラボした企画の一つにあっただけなので、今回の再録は大変貴重です。

 

 

 

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