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はじめの一歩1211話「周囲に応援される」ピースを埋める再起への道が見えた 

今回のはじめの一歩を読んで、一歩の再起が見えてきたように思える。
引退したり撤回したり、もうふらふらやんけ!と作品を批判する声も聞こえてきているが、これは最後の地盤を固めるステップに来ているのではないだろうか。

 
そもそも、幕ノ内一歩のボクシング人生において、敗北や引退に関する出来事は過去にも数度あった。

伊達との試合に負けたあとは、ボクシングに臨む姿勢・・・勝ちへの執着心について痛感し、このままでは終われない。「悔しい」という感情を胸に秘めてリングに立った。

宮田との対戦がなくなり、目標としていたものがなくなったときは、伊達から受け継いだバトンについて思いを馳せ、改めてボクシングの道を歩んだ。

そして今回、パンチドランカーの疑惑が生じて、・・・という構図だが、前の試合での敗北のあと、「周りの心配」がある中で、「次に負けたら引退する」という覚悟を胸にしていた。結果として、パンチドランカー疑惑という新要素も絡み、引退も異論なしという展開になっている。

しかし、いざ引退をし、一歩の言うボクシングから解放された「日常」に帰ってみたところ、一歩が心配かけまいと思っていた母は、一歩がまたも冒険に出るのではないかという予感を抱いている。そして母は母として見守る決意があることを森川先生は1話使って描写した。

 

ボクシングシーンから姿を消した一歩がどこに行っていたのか。その答えは、なんと梅沢のところだった。昔一歩をいじめていた側にいた梅沢は、プロデビューしてからの一歩の一番のファンであり応援者となった。一時は釣り船幕ノ内でともに働き、今は漫画家として活躍している。一歩は釣り船屋の仕事と平行して漫画の仕事の手伝いをしていた。

「周りの方が割り切れていないんだよ」

という梅沢の表現はまさにそのとおりで、先週の話では後楽園ホールの観客も、ボクシング雑誌の編集者たちも心がおいついていないような雰囲気があった。

一歩自身についても「日常にとけこまないと」と意識しなければ、ついついボクシングのことを思い出し、体が勝手に動いてしまう。

 

その一歩が、ボクシングから離れている時間ができたからこそ・・・と行動したのが、久美とのデートである。

そう、久美との関係性もまだまだ曖昧であり、また彼女自身も一歩をどう応援するのか。ボクシングをやめてほしいと思いながらも、でも100%の本心でそう思っていたようにも思えない。とはいえ、メッセージとしてはやめてほしい。平穏な暮らしがしたい。そう主張する側の人だった。

そのデートのさなか、たまたま他の選手の取材に歩いていたボクシング雑誌記者、マリと出会い、一歩へコメントをお願いしようとするのを「ボクシングの話はしないでほしい」と久美が遮るところで、今週の話が終わる。


今まで一歩は「みんなに心配かけたくない」×「けどボクシングをしたい」と、少し二の足を踏みながらもその道を行く構図の中でボクシングを続けていた。
今回、引退宣言をしてから描いている「日常」の風景を見るに、ここが徹底的に踏み固められていくのではないかと思い始めている。

つまり、「みんなが一歩を応援している」×「ボクシングを続けたいという心の底に眠る思い」が掛け合わせられ、再起の道へ行くのではないだろうか。

自分の思いを強く持った一回目の再起、先輩のバトンを受け継いでいくと決めた二回目の再起、そして三回目は、周囲の後押し×自身の思い という強固な決意が生まれ、自他共に望まれた再起へ。

 

仮にそうなった場合、私としては復帰戦は1回でもいいと思っている。なんならそれが宮田との非公式スパーリングでもいいとすら思う。

パンチドランカー疑惑をひっさげながらまた世界武者修行するとなると、それこそ今までの騒動はなんだった感が強い。

 

ボクシングは続けるが、それは非公式の場でのスパーリングや後輩の指導であったり、そして先輩方の活躍をジムメイトとして応援する。強さってなんだろう。その答えを探し続ける・・・。

 

この作品が一歩が世界を制する物語ではないのだとしたら・・・この作品の根底にあるテーマは、「弱かったけど、努力で強くなれる」というメッセージであったように見えて、一番書きたかったのは「目標を持ってがんばる姿勢が、こんなにもたくさんの味方をつくり、応援される対象となる」という、周りの巻き込みにもスポットを当てた話として描かれるんじゃないかな、と。

一歩の引退を中心とした、周囲の方々を描くここ最近の展開から思うようになった。

 

はじめの一歩(5) (講談社漫画文庫)

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