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「はじめの一歩」が歩んできた28年は悲しい結末を迎えてしまうのか

2017年11月8日発売のマガジンに掲載された「はじめの一歩 1201話」があまりにも衝撃的だったため、この記事を書いている。
連載28年にも及ぶ一歩の物語が、まさかこんな方向に行こうなんて誰が思ったか。誰が望んでいただろうか。

(単行本派の方にはネタバレになります。お気をつけください)

 

 

はじめの一歩(119) (講談社コミックス)

はじめの一歩(119) (講談社コミックス)

 

 

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ここ数年のストーリーの進展に疑問を抱くことは確かにあった。でもそれはそれで「森川先生らしいなあ」とも思っていた。
森川先生らしい、一歩たちの世界の描き方なのだと。遠回りしても、わき道にそれても、一歩や周りの人たちの挑戦にスポットがあたり、いずれ待つ大舞台へとつながっていくのだと楽しみにしていた。

 

「この先 会長と一緒に行くコトは できないのだと思います」。一歩自身の口から、謝罪の言葉として出るなんて誰が思っていたか。
衝撃の展開だった。

 

なんのこっちゃ、という感じだと思うので、この作品について紹介したい。

 

はじめの一歩(1) (講談社漫画文庫)

はじめの一歩(1) (講談社漫画文庫)

 

 

はじめの一歩という、週刊少年マガジンで連載しているボクシング漫画がある。
1989年から連載し、単行本は2017年7月に出た117巻が最新刊と、長く歩み続けている漫画だ。

いじめられっ子だった主人公:一歩がボクシングと出会い、「強さ」とは何かを探し求めながらボクシングの世界で生きていくストーリーである。

新人王から日本一、アジア、世界へとフィールドを広げていくだけでなく
ジムの仲間の活躍や、それこそジムの先輩の世界挑戦や、ライバルの出現・ライバル自身の成長なども描かれており
さまざまな名試合が繰り広げられ、それぞれの人物への愛を語るファンも多い。

かくいう私も、初めての日本タイトル(VS伊達)や、日本タイトル再挑戦(VS千堂)、沢村との防衛戦、ジムの先輩鷹村の世界挑戦(VSブライアンホーク)ジムの先輩木村の日本タイトル挑戦(VS間柴)、伊達の世界戦(VSリカルドマルチネス)若き日の鴨川、猫田のエピソードなどなど、ベストバウトを挙げるのが難しい。

一歩の成長と挑戦、敗北と新たな武器の習得…一歩自身の成長も、毎試合戦う相手とのエピソードや前後の話も盛りだくさんであり…逆にいうと、なかなか一歩の世界挑戦が遠いなあ!とか、永遠のライバル宮田との対決はいつになるんだ!とやきもきすることも多いのは事実ではある。

紆余曲折あり、宮田との再戦が叶わない流れになり「それはないだろ・・・」と思ったり、後輩板垣の異次元の強さが不思議なことになっていたり、鷹村の網膜剥離疑惑が出たけどなかったことになったけどやっぱりどうなの?とやきもきしたり
一歩自身にもパンチドランカー疑惑が出たり気のせいだったことになったり、どうなの?としっくりこないことが多くなってはいた。
なってはいたが、ゆるく長くこの話はどうなるのだろうと楽しみにしていた。なんだかんだでおもしろいのだ。鴨川ジムの面々は、遠回りもしながらも着実に進展しており、(成長もすれば、キャリアを積んだことによる新たな課題…木村や青木の脳裏によぎる「引退」の文字など)これからどうなるのか楽しみだった。


さて。話を今に戻そう。
1201話。2017年11月8日発売のマガジンに掲載された話は、それこそ20年以上の間一歩の成長を見てきたファンにとって衝撃的な話となった。

試合の中で、一歩自身が「自分にカラダに異常が起きている。もう会長と一緒にこの先はいけないだろう」との思いを抱いていることが描かれるのだ。
パンチドランカーではないか、という疑惑が作中でもあがり、一歩自身それを否定して自身の練習にはげみ、新たな武器の開発を進め、その武器を披露することが期待された試合の中で、だ。

今回の試合の中では不可解なダウンも多く、想像以上の苦戦を強いられていた。しかしそれは「無理にでも新武器を出そうとして戸惑っている→見事に新武器を披露して、次の試合への大ステップ!」という展開だと信じていた。(その展開だったとして、ちょっとズルズル行き過ぎた感はあったのだが)


…しかし。

一歩は試合中、会長に意味ありげな視線を送る。会長はそれを受け、動揺する。「お前はワシに何を伝えようとしたんじゃ。」

次のページからが圧巻だった。
一歩の「申し訳ございません」から始まる心情の吐露。
自分の体に起きている異変について、それが回復するのではという一縷の望みも潰えた自覚があることについて。

そして、続く見開きのページ。森川先生渾身の執筆に感じた。2ページ見開きが2回続く。絵の迫力にぞっとする。モノローグの内容に衝撃を受ける。

この4ページは今後の漫画史上に残るんじゃあないかと思うほど。

言葉を失ってしまった。あまりの迫力に、衝撃に、何度も読んでしまう。

「もう一緒にいけない」というメッセージが、作品から読者に対するメッセージにも聞こえてしまった。

ボクシング漫画で、主人公がパンチドランカーになるという展開がナシかといえば、あることはあるんだと思う。
球漫画で主人公が肩を壊してしまう展開もあるだろう。
バスケットボール漫画で主人公が体を壊してしまうこともあった。
また、唐突に漫画が終わってしまうことも、私は何度も見てきた。

しかし、はじめの一歩という漫画が歩いてきた28年が、まさかこんな道にたどり着くだなんて誰が望んでいただろうか。

これが例えば世界戦であったり、何かの到達点のような試合で死力を尽くす戦いならばまだしも。各国のナショナルチャンピオン戦…世界に挑むための武者修行の場ということもショックの一つだ。

 

連載はまだ続いているので、次回の話、今後の展開でもしかしたら…ということもあるかもしれない。
いずれにせよ20年以上一歩の活躍を見ていた読者は…一人のボクサーの誕生と活躍を見てきたファンは…一歩の悲壮な終焉を望んではいない。

 森川先生が休載がちだったことも、短ページ連載が今まで以上に多かったことも有り、連載を続けることが難しくなってしまったのか…?など憶測はとどまる所を知らない。次週休載のため、再来週の掲載を心して待つしか無い。